宮本百合子 『道標』 「あなたは、自分のそういうものの感じかたを…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「あなたは、自分のそういう感覚を過剰に認めすぎてるわよ」
「…………」
「ぶこは、自己中心的な人ね。自分が正しいから怒ってると思ってるみたいだけど、違うわ。ソ連まで来て、こんな女同士のいざこざみたいなこと――私には本当にうんざりなのよ……」
「――偉そうに、何を生意気言ってんのよ。――ぶこはいつもそう。都合よく理屈こねて――卑怯よね」
「そうは思わないわ。だって、あんたがああいう風に絡んでくるとき、私はどうしたらいいの?――どうしたら、あんたが気が済むの?」
「駒沢の頃、そういうときは、私は怖くなって泣いたり、真実を証明したりしたわ。やっぱり、今でも私がそうすればあなたの気が収まる?」
「――私は、もうそうしなくていいわ。お互いのために――私たち、普段は病的なところなんてなくて過ごしてるのに、こういう時になると、まるで突然おかしなことになるんだもの――これこそ病的だと思うわ。私、苦しくなるし、自分たちが恥ずかしい……」
「私たちは性的異常者じゃないのよ。――人間の親密さのさまざまなニュアンスを認めてるだけなのよ」
「そんなことは分かってるわ」
「変じゃないの、だったらどうして、あんなに、何とも言えない図々しい態度になれるんだろう。自分で分かる? どんなに――」
「普通じゃないのかしら……」
「そりゃ普通じゃないだろうよ。私は自分だって普通だなんて一度も言ったことないよ」
「…………」

原文 (会話文抽出)

「あなたは、自分のそういうものの感じかたをあんまり自認しすぎているわよ」
「…………」
「ぶこは、ひとりよがりで、自分は真実だから、おこりもすると思っているとしたら、違うことよ。ソヴェトへ来てまで、そんな何だか女同士の痴話喧嘩みたいなこと――わたしほんとに御免だから……」
「――えらそうに、なにを生意気云ってるんだ。――ぶこはいつだってそうだ。自分の都合のいいように理窟をつける――卑劣さ」
「そうは思わない。だって、あんたがああいう風にからんじまうとき、わたしは、どうしたらいいの?――どうしたら、あなた、気がすむ?」
「駒沢のころ、そういうとき、わたしはこわくなって泣いたり、真実を証明したりしました。やっぱり、いまもわたしがそうすればあなたの気がやすまる?」
「――わたしは、もうそうしなくてよ。お互のために――わたしたち、折角いつもは病的なところなんかなくて暮しているのに、こんな時っていうと、まるで突発的に妙になるんだもの――これこそ病的だとしか思えない。わたし苦しくなるし、自分たちが恥しい……」
「わたしたち性的異常者じゃないんだもの。――人間の親密さのいろんなニュアンスを肯定しているだけなんだもの」
「そんなことはわかってるさ」
「変じゃないの、じゃどうして、あんなに、何とも云えないぐらんとした居直りかたになるんだろう。自分でわかる? どんなに――」
「普通でないか……」
「そりゃ普通じゃなかろうさ、わたしは自分を一遍だって普通だなんて云ったことはありませんよ」
「…………」

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