宮本百合子 『道標』 「正餐では可笑しいことがあったわね――話し…

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現代語化

「正餐では可笑しなことがあったわね――話してもいい?」
「なに?」
「私たちがハルビンへ着いたとき、もうロシア暮らしに慣れるつもりで、『黄金の角』に泊まったんです。あそこでは日本語も英語も通じないのね。お昼になったのでご飯食べようとすると、今はまだ食堂が開いていない、というんで、高い特別食堂に部屋を取ったの。7時頃、夕食を頼むと、また同じことを言うの。あれで二日ばかり、随分変なご飯食べたわね」
「ああ、ロシアだけでしょうね、正餐が3時から5時だなんていう習慣のところは――」
「そりゃ吉見さんには似合わない失態でしたね」
「小説にだって正餐の時間なんてよく出てくるじゃないですか」
「――そこが、赤毛布の悲しさ、ですよ。あなたがただって、人知れず、似たようなことやって来たんじゃないんですか」
「私は大丈夫でしたよ」
「ハルビンに、またどうしてそんなに滞在されたんですか」
「猿の毛皮を買わなきゃいけなかったんですもの」
「猿の毛皮?」
「コートの裏につけるんです」

原文 (会話文抽出)

「正餐では可笑しいことがあったわね――話してもいい?」
「なにさ」
「わたしたちがハルビンへついたとき、もうロシア暮しに馴れるんだというわけで、『黄金の角』へとまったんです。あすこは日本語も英語も通じないのね。おひるになったんで御飯たべようとすると、いまはまだ食堂があいていません、というんで、高価いスペシアルを部屋へとったの。七時頃、夕飯をたのむと、またそういうの。あれで二日ばかり、随分へんな御飯たべたわね」
「ああ、ロシアだけでしょうからね、正餐が三時から五時だなんていう習慣のところは――」
「そりゃ吉見さんにも似合わないぬかりかたでしたね」
「小説にだって正餐の時間はよく出て来るじゃないですか」
「――そこが、赤毛布の悲しさ、ですよ。あなたがただって、人知れず、似たようなことやって来たんじゃないんですか」
「わたしは大丈夫でしたよ」
「ハルビンに、またどうしてそんなに滞在されたんです」
「猿の毛皮を買わなけりゃならなかったんですもの」
「猿の毛皮?」
「外套のうらにつける」

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