林不忘 『丹下左膳』 「安大人、お前は下山してしまっては、なつか…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

現代語化

「安、お前に父親に会いたいって気持ちがあるなら、今下山したらダメじゃないか」
「お、安の父親が分かったんですか」
「ううん、俺の父親は今度の日光造営の竣工式に紫の着物で出る人だって聞いて、それで行先を日光にして、会おうと思って来たんだけど」
「何、紫の着物ですか?」
「ふーん、紫の……いやでも、まさか――だけど、伊賀にゆかりがあるってことは……」
「おい安、落ち着け。お前の父親かどうかは知らんが、竣工式に紫の着物で出る人は一人しかいない……造営奉行の柳生対馬守様――って聞いたぞ」
「えっ! じゃあ、それが俺の父親!」
「安! お前は柳生対馬守の隠し子なのか。大変なことになったな」
「何言ってんだよ、俺は嬉しくて泣いてんじゃねえんだよ。俺の父親が大名だなんて。ヘンだな。大名の父親なんてこのチョビ安には要らねえよ。そう分かったら急に気が楽になったよ。俺の父親はやっぱりこのお侍さん。ねえお父さん、いつまでも俺の父親でいてくれよ……向こうの辻のお地蔵さん、ちょっと聞いてくれよ――なんで俺が大名の子なんかじゃなくて、トンガリ長屋の安兄ちゃんなんだよ」

原文 (会話文抽出)

「安大人、お前は下山してしまっては、なつかしの父上に会えぬではないか」
「オオ、安の父親が知れましたか」
「ウム、おいらの父は、なんでもこんどの日光造営の竣工式に、紫の衣装をつけて出る人だと聞いて、それを頼りにこの日光まで、わざわざ会いに来たんだけど」
「ナニ。むらさきの衣装をつけて出る人だ?」
「フーム、紫の……イヤしかし、まさか――だが、伊賀にゆかりと言うことには……」
「コレ、安、しっかりしろヨ。お前の父親かどうかは知らぬが、竣工の式に紫の衣装をつける人は、ただ一人……造営奉行の柳生対馬守様――と聞いたぞ」
「エッ! すると、それがおいらの父親!」
「安ッ! 貴様は柳生対馬守の落し胤でもあるのか。えらいことになったものだな」
「何言ってやんでえ、おいらアうれしくッて泣いてるんじゃアねえや。あたいの父は大名か。ヘン、なアンだ。お大名の父なんざあ、このチョビ安兄ちゃんは用はねえんだ。そうわかったら、一度にお座が覚めちゃったい。おいらの父はやっぱりこのお侍さん。ねえ、お父上、いつまでもお父上でいておくれねえ……むこうの辻のお地蔵さん、ちょっときくから教えておくれ――なんでえ、おらあ大名の子なんかじゃあねえや、トンガリ長屋の安兄哥だい」

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