林不忘 『丹下左膳』 「大岡……大岡越前守か。うむ、いつぞやこの…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

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「大岡……大岡越前守か。そうだ、このお美夜坊が、大岡殿の屋敷に届け物をしたとき、直接お目にかかって、そのとき越州殿にも頼んであるはずだが……」
「うん、そうだよ!――お願いがあるんだ。対馬守様、お願いがあります。聞いてください。ここにいるチョビ安っていうのは、あなたの藩、伊賀国柳生の里の生まれだっていうけど、父も母もわからないんだ。江戸にやってきて、小さい頃から苦労してるのも、顔も知らない親を探すためなんだ。だから田丸さん、お願いというのは別にない。あなたの藩で、チョビ安の両親を探してもらえないでしょうか」
「伊賀なら、きっとチョビ安の両親を知る人もいるだろう。藩中に広く伝えて、探せば何か手がかりが見つかるかもしれない」
「おや、この子は伊賀の者か。ハハハハ、そしたら、眉宇の間に、まだ若いのに、伊賀の気質が滲み出てるわけだ。いや、すごいね」
「へぇ、笑わせるなよ。じいさんを引っ張り出したからって、急に俺にもゴマすってるんだろ。へっ、そんなの効かないよ」
「いや~、口が達者ですねぇ。チョビ安殿……伊賀の者と聞いて、なんだか急に愛しくなりました」
「ご相談があります。あなたの手で、チョビ安の両親を探し出してくれたら、この作阿弥、すぐにこの長屋を出て、お手伝いしましょう」
「つまり、条件ってことですか。こちらでチョビ安の両親を探せば、今集めている工匠たちに加わって、日光に一緒に来てくれる……分かりました。チョビ安殿の両親は、私が責任を持って必ず一緒に見つけます」
「それじゃ、作阿弥殿、チョビ安のために、日光に行くことを決心したのか。行くか行かないかは、お前に任せる。この泰軒には、何も言う権利はないね」

原文 (会話文抽出)

「大岡……大岡越前守か。うむ、いつぞやこのお美夜坊が、大岡どののお屋敷へお届けものをして、じきじきにお目どおりを許されたさい、これの口から越州殿にも、お願いしてあるはずじゃが……」
「ウム、そうじゃ!――頼みがある。対馬守様に、お願いがあるのじゃ。聞いてくだされ。これ、ここにおるチョビ安という者は、貴殿の御藩、伊賀国柳生の里の生れだそうじゃが、父も母もわからぬもの。こうして江戸へまいって、幼い身空で世の浪風にもまれておるのも、その、顔も知らぬ父母をさがし当てんがため。そこで田丸氏、願いというのはほかではない。貴藩の手において、このチョビ安の両親をさがし出してはくださらぬか」
「同じ伊賀なれば、さだめし、チョビ安の両親を知る者も、ないとはかぎらぬ。藩中に広く手をまわして、おたずねくださらば、思わぬ手がかりもつくであろうが」
「ホホウ、このお児は、伊賀の者か。ハッハッハッ、そう言えば、道理で、眉宇の間に、年少ながらも、人を人とも思わぬ伊賀魂が、現われておるわい。イヤ、あらそわれんものじゃ」
「ヘッ、笑わかしゃがらア。お爺ちゃんを引っぱり出してえもんだから、急に、おいらにまでお世辞を使ってやがる。ウフッ、その手にはのらねえよ」
「イヤ、どうも、辛辣なものですナ。これ、チョビ安どの……同じ伊賀の者と聞いて、なんだか急に、なつかしゅうなったワ」
「御相談がござる。貴殿の手で、このチョビ安の父母をさがし出してやろうと約束してくだされば、この作阿弥、ただちに長屋を出て、御用にあいたつよう粉骨砕身いたすでござろう」
「ウム、つまり条件でござりますな。当方において、チョビ安の両親をたずねるとあらば、これよりただちに、いまわれわれの手において集めつつある工匠の一人として、日光へお出むきくださる……承知いたした。チョビ安どのの父母は、拙者が主となってかならずともに発見するでござろう」
「それでは作阿弥殿、チョビ安のために、日光御出馬を決心なされたのか。ゆくもゆかぬも御辺の心まかせじゃ。この泰軒は、何ごとも言うべき筋合いではござらぬ」

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