林不忘 『丹下左膳』 「それはそうと、どうして作阿弥どのがここに…

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「ところで、作阿弥殿がここにいるってことを……いや、このトンガリ長屋の作爺さんが、作阿弥の偽名だってことを、あなたはなんで知ったんですか?」
「ウチの殿様である柳生対馬守が、神馬を彫って日光廟に寄付したいと思い立ったんですが、馬の彫刻といえば、みんなすぐに作阿弥殿の名前を思い浮かべるんです。でも、もうずいぶん前から世の中から姿を隠して、ひっそりと暮らされてるんだとか……必死に探したけど、全然行方がわからなくて、あきらめるしかないと思ってたんです。でも、最近になって、どっからか聞いた話によると、この長屋の作爺さんが、作阿弥殿の後身だって聞いて」
「ねぇ、作爺ちゃん! おじいちゃん、ただのじいちゃんだよねぇ。ただの、トンガリ長屋のおじいちゃんで、そんな人じゃないよねぇ」
「うん、そうだよ! ただの作爺さんだとも!」
「田丸殿でしたね。やっぱり私は、お聞きになったとおり、ただの、このトンガリ長屋の作爺です。そっちのほうがよっぽど安全です。せっかくのご厚意ですが、この話は、お断りせざるをえません。私はもう、鑿を持てなくなりましたから……」
「その、情報源は?」
「大岡越前守殿……」

原文 (会話文抽出)

「それはそうと、どうして作阿弥どのがここにおられることを……イヤ、このトンガリ長屋の作爺さんが、作阿弥のかりの名であることを、尊台においてはいかにして見やぶられたかな?」
「神馬を彫らせて日光御廟に寄進したいと、てまえ主人柳生対馬守が思いたたれたのですが、馬の彫刻といえば、誰しもただちに頭に浮かぶのが、この作阿弥殿。いつのころからか世にかくれて、巷にひそんでおられるとのこと……八方手をつくして捜索いたしましたなれど、皆目行方知れずで、これは、あきらめるよりほかあるまいと存じおりましたやさき、ある筋より、当長屋の作爺さんという御仁こそ、作阿弥殿の後身じゃともれ聞きましてナ」
「ねえ、作爺ちゃん! お爺ちゃんは、ただのお爺ちゃんだよねえ。ただの、トンガリ長屋のお爺ちゃんで、そんな人じゃアないよねえ」
「ウム、そうじゃとも! ただの作爺さんだとも!」
「田丸殿……と申されましたな。やっぱり拙者は、お聞きのとおり、ただの、このトンガリ長屋の作爺じゃ。そのほうが無事らしい。せっかくのお申し出でながら、この儀は、かたくおことわりするほかはござるまい。わしには、もう、鑿を持てぬ……」
「その、ある筋とは?」
「大岡越前守殿……」

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