林不忘 『丹下左膳』 「相手は誰だ、相手はッ?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

現代語化

「相手は誰だ、相手はッ?」
「おい、お前、そんな薪割りを持ってどうしたの?」
「や!喧嘩なんじゃないのか?」
「半鐘が鳴らないじゃないか。火事はどこだ」
「いや、火事でもない。喧嘩でもない」
「おい、お前ら、このごろちょっとでも、この長屋が住みよくなったとか、困ったことがあれば相談できるのは、誰のおかげか分かってるよな」
「泰軒先生だ」
「その通り!泰軒先生は、俺たちの恩人だ」
「泰軒先生あっての、トンガリ長屋だ」
「でね――」
「さあ、これに乗ってごらん、声がよく通るだろう」
「おい、あの大恩人の泰軒先生が、今すごい顔して、向島のほうへ飛んでった」
「この間まで、作爺さんの隣に住んでたチョビ安が、先生を迎えに来たんだ。何かただならぬことがあったみたいだったのは、チラッと見た先生の顔で、俺も分かった。先生と安の話から、渋江村の司馬寮の跡地ってのを聞き漏らしたんだけど、そこに何かあって、先生が行ったみたいだ。お前らも、トンガリ長屋と江戸に名を馳せた連中なら、先生のことは放っておけないだろ?」

原文 (会話文抽出)

「相手は誰だ、相手はッ?」
「なんだい、お前さん、そんな薪ざっぽうなどを持ってサ」
「や! 喧嘩じゃあねえのか」
「半鐘が鳴らねえじゃねえか。火事はどこだ」
「いや、火事でもない。喧嘩でもない」
「オウ、おめえら、このごろすこしでも、この長屋が住みよくなり、また、困ったことがありゃア、持ち込んで行けると思って安心していられるのは、いったいどなたのおかげだか、わかってるだろうな」
「泰軒先生だ」
「そのとおり! 泰軒先生は、おれたちの恩人だ」
「泰軒先生あっての、トンガリ長屋だ」
「そこでだ――」
「サア、これへ乗っておやりなせえ、声がよく通るだろう」
「オイ、その大恩人の泰軒先生が、いま眼の色を変えて、向島のほうへすっとんでいらしった」
「この間まで、作爺さんの隣家に住んで、おれ達の仲間だったチョビ安が、先生を迎えに来たのだ。なにやらただならぬ出来事らしいことは、チラと見た先生の顔つきで、おらア察したんだ。先生と安の話から、渋江村の司馬寮の焼け跡というのを小耳にはさんだが、そこに何ごとかあって、先生はとんでいったものとみえる。おめえらも、トンガリ長屋と江戸にきこえた連中なら、よもや先生を見殺しにゃアしめえナ」


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