林不忘 『丹下左膳』 「お前さんの番か。なんじゃ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

現代語化

「お前の番か。なんだ」
「あの、一生懸命やってるつもりなんですけど、お姑さんに嫌われてて、毎日つらいんですけど――」
「ふん、それじゃお姑さんに嫌われるのは当然だ。自分ではやってるつもりですけれど…と、その、けれどが気に入らん」
「やっぱりそうでしょう。年寄りは年寄り同士、泰軒さんだって白髪混じりなのに、すぐにお姑さんの味方」
「そういう考えだからつまらんのだ。年寄りは近い内に死ぬもの、無理を言っても無理じゃないと思えば、お姑さんの無理も無理じゃなくなるだろう」
「でも、ウチのお姑さんは、何かというと私のこと娼婦上がりって――」
「そう言われまいと思ったら、俺の言ったことを考えて、お姑さんの無理を無理と思わないように修行しなさい。そうすれば、そのうちお前のほうも無理を言いたい時が来るだろう。そのお前の無理も無理じゃなくなる。何を言っても無理でなくなれば、初めて家が平穏になるんだ。分かるか?」
「私、お経みたいで分かりません」
「お経か。ま、いい。明日の晩、旦那を連れてこい。さあ、次!」
「先生!」

原文 (会話文抽出)

「お前さんの番か。なんじゃ」
「アノ、あたしは一生懸命につとめているつもりですけれど、お姑さんの気にいらなくて、毎日つらい朝夕を送っていますけれど――」
「ふん、そのようすじゃア、お姑さんの気にいらねえのはあたりまえだ。自分では勤めているつもりですけれど……と、その、けれどが、わしにも気にいらねえ」
「あら、こんなことだろうと思ったよ。年寄りは年寄り同士、泰軒さんもチラホラ白髪がはえているもんだから、一も二もなくお姑さんの肩をもって」
「コレコレ、そういう心掛けだから、おもしろくないのだ。老人は先が短いもの、ときにはむりを言うのもむりではないと考えたら、お姑さんのむりがむりじゃなく聞こえるだろう」
「だって、うちのお姑さんたら、何かといえば、あたしのことを廓あがりだからと――」
「そう言われめえと思ったら、マア、いまわしの言ったことをよく考えて、お姑さんの言うむりをむりと聞かないような修行をしなさい。そのうちには、お前さんからもむりのひとつも言いたくなる。そのおまえさんのむりもむりではなくなる。何を言っても、むりがむりでなくなれば、一家ははじめて平隠じゃ、ハハハハ。おわかりかな」
「わちきには、お経のようにしか聞こえないよ」
「わちきが出たナ。マア、よい。明日の晩、亭主をよこしなさい。さア、つぎッ!」
「先生ッ!」


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