GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『それから』
現代語化
「ずいぶん考え方が変わったみたいだね。――でもその苦しみってのちに役に立つんじゃないの?昔はそう言ってたよね」
「あれはまだまだ世間のことを知らなかったガキが、世間で言われてることを鵜呑みにして、適当なこと言ってただけだよ。もうとっくに撤回した」
「だって、君ももうそろそろ世間に出ていかなくちゃならないでしょ。そんとき困るよ」
「俺は昔から世の中に出てるよ。特に君と別れてから、世の中がすごく広くなった気がする。ただ君が出歩いてる世間とは種類が違うだけ」
「そんなこと言っても威張ったって、いずれは折れるよ」
「もちろん食えなくなるようなことがあれば、いつでも折れるよ。でも今は不自由してないんだから、なんでわざわざ辛い経験をしようかな。冬に備えるのにインドア人がコートを着るのと同じだよ」
原文 (会話文抽出)
「僕は所謂処世上の経験程愚なものはないと思つてゐる。苦痛がある丈ぢやないか」
「大分考へが違つて来た様だね。――けれども其苦痛が後から薬になるんだつて、もとは君の持説ぢやなかつたか」
「そりや不見識な青年が、流俗の諺に降参して、好加減な事を云つてゐた時分の持説だ。もう、とつくに撤回しちまつた」
「だつて、君だつて、もう大抵世の中へ出なくつちやなるまい。其時それぢや困るよ」
「世の中へは昔から出てゐるさ。ことに君と分れてから、大変世の中が広くなつた様な気がする。たゞ君の出てゐる世の中とは種類が違ふ丈だ」
「そんな事を云つて威張つたつて、今に降参する丈だよ」
「無論食ふに困る様になれば、何時でも降参するさ。然し今日に不自由のないものが、何を苦しんで劣等な経験を嘗めるものか。印度人が外套を着て、冬の来た時の用心をすると同じ事だもの」