太宰治 『斜陽』 「みなさん、お強いのね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『斜陽』

現代語化

「みなさん、お強いんですね」
「先生、持ってまいりました」
「何しろ、うちの社長が、強くてですね、二万円と言って譲らなかったんですが、やっと一万円で」
「小切手ですか?」
「いいえ、現金です。ごめんなさい」
「まあ、いいわ、領収書を書こう」
「直さんは?」
「知りませんよ。直さんの管理人でもありません」
「この頃、上原さんと、何か悪いことでもあったんじゃないですか? いつも、必ず、一緒だったのに」
「ダンスの方が、好きになったんだそうです。ダンサーの恋人でもできたんでしょうよ」
「直さんったら、まあ、お酒の上にまた女だから、始末が悪いですね」
「先生のご指導ですから」
「でも、直さんの方が、たちが悪いわ。あんな坊ちゃん育ちは、……」
「あの」
「私は、直治の姉なんです」
「お顔がそっくりでいらっしゃいますもの。あの土間の暗いところに立っておられたのを見て、びっくりしました。直さんかと思いました」
「そうですか」
「こんな汚いところへ、よくまあ。それで? あの、上原さんとは、前から?」
「ええ、六年前にお会いして、……」
「お待ちどうさま」
「お召し上がりください。熱い内に」
「いただきます」

原文 (会話文抽出)

「みなさん、お強いのね」
「先生、持ってまいりました」
「何せ、うちの社長ったら、がっちりしていますからね、二万円と言ってねばったのですが、やっと一万円」
「小切手か?」
「いいえ、現なまですが。すみません」
「まあ、いいや、受取りを書こう」
「直さんは?」
「知らないわ。直さんの番人じゃあるまいし」
「この頃、何か上原さんと、まずい事でもあったんじゃないの? いつも、必ず、一緒だったのに」
「ダンスのほうが、すきになったんですって。ダンサアの恋人でも出来たんでしょうよ」
「直さんたら、まあ、お酒の上にまた女だから、始末が悪いね」
「先生のお仕込みですもの」
「でも、直さんのほうが、たちが悪いよ。あんなお坊ちゃんくずれは、……」
「あの」
「私、直治の姉なんですの」
「お顔がよく似ていらっしゃいますもの。あの土間の暗いところにお立ちになっていたのを見て、私、はっと思ったわ。直さんかと」
「左様でございますか」
「こんなむさくるしいところへ、よくまあ。それで? あの、上原さんとは、前から?」
「ええ、六年前にお逢いして、……」
「お待ちどおさま」
「召し上れ。熱いうちに」
「いただきます」


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