GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 太宰治 『斜陽』
現代語化
「つまらない」
「衰弱が、すごく急にきてるらしいんだ。さっき、「明日もわからない」って言ってた」
「どこかに、電報打たなくてもいいかしら」
「それは、おじさんにも相談したんだけど、おじさんは、「今は、そんな人を集めることができない時代だ」って言ってた。来ていただいてたとしても、こんな狭い家じゃ、かえって失礼だし、この近くには、ろくな旅館もないし、長岡の温泉にだって、二部屋も三部屋も予約はできない、つまり、僕らはもう貧乏で、そんな偉い方々を呼び寄せる力がないってことなんだ。おじさんは、すぐあとで来るはずだけど、でも、あいつは、昔からケチで、頼みにも何もならない。昨日だってもう、ママの病気は構わず、僕にさんざんお説教だ。ケチなやつからお説教されて、気がついたなんて者は、過去の歴史において一人もいない。姉と弟でも、ママとあいつとじゃまるで、雲泥の差なんだからなあ、嫌になるよ」
「でも、私はとにかく、あなたは、これからおじさまに頼らなければ、……」
「まっぴらだ。いっそ乞食になったほうがいい。姉さんこそ、これから、おじさんに頼んでみればいいよ」
「私には、……」
「私には、行くところがあるの」
「縁談? 決まってるの?」
「いいえ」
「自活か? 働く女。やめて、やめて」
「自活でもないの。私ね、革命家になるの」
「へえ?」
「奥様、何かご用でしょうか」
「何?」
「お水?」
「夢を見たの」
「そう? どんな夢?」
「蛇の夢」
「縁側の沓脱石の上に、赤い縞のある女の蛇が、いるでしょ。見てごらん」
原文 (会話文抽出)
「だめなの? そうでしょう?」
「つまらねえ」
「衰弱が、ばかに急激にやって来たらしいんだ。今、明日も、わからねえと言っていやがった」
「ほうぼうへ、電報を打たなくてもいいかしら」
「それは、叔父さんにも相談したが、叔父さんは、いまはそんな人集めの出来る時代では無いと言っていた。来ていただいても、こんな狭い家では、かえって失礼だし、この近くには、ろくな宿もないし、長岡の温泉にだって、二部屋も三部屋も予約は出来ない、つまり、僕たちはもう貧乏で、そんなお偉らがたを呼び寄せる力が無えってわけなんだ。叔父さんは、すぐあとで来る筈だが、でも、あいつは、昔からケチで、頼みにも何もなりゃしねえ。ゆうべだってもう、ママの病気はそっちのけで、僕にさんざんのお説教だ。ケチなやつからお説教されて、眼がさめたなんて者は、古今東西にわたって一人もあった例が無えんだ。姉と弟でも、ママとあいつとではまるで、雲泥のちがいなんだからなあ、いやになるよ」
「でも、私はとにかく、あなたは、これから叔父さまにたよらなければ、……」
「まっぴらだ。いっそ乞食になったほうがいい。姉さんこそ、これから、叔父さんによろしくおすがり申し上げるさ」
「私には、……」
「私には、行くところがあるの」
「縁談? きまってるの?」
「いいえ」
「自活か? はたらく婦人。よせ、よせ」
「自活でもないの。私ね、革命家になるの」
「へえ?」
「奥さまが、何かご用のようでございます」
「何?」
「お水?」
「夢を見たの」
「そう? どんな夢?」
「蛇の夢」
「お縁側の沓脱石の上に、赤い縞のある女の蛇が、いるでしょう。見てごらん」