島崎藤村 『夜明け前』 「どうも心が騒いでしかたがない。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「なんか落ち着かねぇ。」
「さっきから、俺は一人でボーっとしてるんだ。」
「妻籠でもどうするんだろうね。」
「それはお前、寿平次さんのうちだって、俺んちと同じさ。今頃はきっと同じことで揉めてるだろうよ。」
「そうかもしれないですね。」
「俺がお前に話してるようなことを、寿平次さんはお里さんに話してるに違いないよ。昔のことなんて、俺にもよくわかんないけど、うちの爺さんにしても、親父にしても、ほとんどこの街道と宿場のために一生を捧げてきたようなもんだよ。その長い苦労が、ここ最近で全部パーになっちまうなんて、そんなんじゃねえと思うよ。少なくとも本陣問屋として、いろんなところと取引してきたのも青山家代々の伝統なんだから。福島の役所から来た書類にもそう書いてある。今まで本陣問屋で庄屋も兼ねてたようなところは、先祖が荒れ地を開墾したような歴史のある旧家が多いんだけど、今はそういう昔のことをこだわるなと言ってるんだよ。あの笹屋の庄助さんなんてうちに来て、『いくらでも強く出ろ』なんて言ってたけど、俺たちが自分たちのことを後回しにしなかったら、宿場の改革なんてできるわけねえだろ。」
「うーん、よくわかりません。でも、お母さんが心配してらっしゃるもんだから、俺もわけわかんなくなっちゃいますよ。」<ctrl100>

原文 (会話文抽出)

「どうも心が騒いでしかたがない。」
「さっきから、おれはひとりですわって見てるところさ。」
「妻籠でもどうしていましょう。」
「そりゃ、お前、寿平次さんのとこだって、おれの家と同じことさ。今ごろはきっと同じような話で持ちきっているだろうよ。」
「そうでしょうかねえ。」
「おれがお前に話してるようなことを、寿平次さんはお里さんに話してるにちがいないよ。そうさな、ずっと古いことはおれにもまあよくわからないが、吾家のお祖父さんにしても、お父さんにしても、ほとんどこの街道や宿場のために一生を費やしたようなものさね。その長い骨折りがここのところへ来て、みんな水の泡のように消えてしまうなんて、そんなものじゃないとおれは思うよ。すくなくも本陣問屋として、諸国の交通事業に参加して来たのも青山家代々のものだからね。福島の総管所から来る書付にもそのことは書いてある。これまで本陣問屋で庄屋を兼ねるくらいのところは、荒蕪を切り開いた先祖からの歴史のある旧家に相違ないが、しかしこの際はそういう古い事に拘泥するなと教えてあるんだよ。あの笹屋の庄助さんなぞはおれのところへやって来て、いくらでもお前さまは強く出さっせるがいいなんて、そんなことを言って行ったが、このおれたちが自分らをあと回しにしなかったら、どうして宿場の改革も望めないのさ。」
「まあ、わたしにはよくわかりません。なんですか、あんなにお母さんが心配していらっしゃるものですから、自分まで目がくらむような気がしますよ。」


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