島崎藤村 『夜明け前』 「いや、はや、」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「いやはや」
「先月の26日には農兵の召還について、福島のお役所から役人が出張してくる。29日にはお前、井伊掃部頭の若殿様から彦根のお城まで、ご一行500人が武士も人足も馬籠に泊まるんだ。伏見屋あたりでは14部屋も用意する騒ぎだって。お前も聞いて来たろうが、百姓一揆はその騒ぎの中だったんだよ」
「そう言われると俺も情けない」
「お前だって峠村の組頭だ。もっと気を利かせそうなものじゃないか。半蔵さんに勧めるくらいにして、早く帰ってきてくれそうなもんじゃないか」
「そんなに怒んなよ。とにかく、お前、往復に時間がかかるし、それにあの雨だ。伊勢路から京都まで、毎日毎日雨が降って、降って、降り続いて……」
「こっちも雨は困るよ」
「おまけに、庄助さん、帰り道はまた雨降り続きの暑い日ばかりなんだ。いくらも歩けないよ。それにしても、なんて暑さなんだ」
「あ、あ。今そこで上の伏見屋の隠居に捕まって、さんざん怒られてきた。あの金兵衛さんは氏神様にお参りに行くところなんだって。どこへでもかしこへお辞儀ばかりだよ。庄助さん、後でゆっくり聞こう」

原文 (会話文抽出)

「いや、はや、」
「先月の二十六日には農兵呼び戻しの件で、福島のお役所からはお役人が御出張になる。二十九日にはお前、井伊掃部頭の若殿様から彦根の御藩中まで、御同勢五百人が武士人足共に馬籠のお泊まりさ。伏見屋あたりじゃ十四人もお宿を引き受けるという騒ぎだ。お前も聞いて来たろうが、百姓一揆はその混雑の中だぜ。」
「そう言われるとおれも面目ない。」
「お前だって峠村の組頭だ。もっと気をきかせそうなもんじゃないか。半蔵さまに勧めるぐらいにして、早く帰って来てくれそうなもんじゃないか。」
「そうがみがみ言いなさんな。なにしろ、お前、往復に日数は食うし、それにあの雨だ。伊勢路から京都まで、毎日毎日降って、降って、降りからかいて……」
「こっちも雨じゃ弱ったぞ。」
「おまけに、庄助さ、帰り道はまた雨降りあげくの暑い日ばかりと来てる。いくらも歩けすか。それにしても、なんという暑さだずら。」
「やあ、やあ。今そこで上の伏見屋の隠居につかまって、さんざんしかられて来た。あの金兵衛さんは氏神さまへお詣りに出かけるところさ。どこへもかしこへもお辞儀ばかりだ。庄助さん、いずれあとでゆっくり聞こう。」


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