島崎藤村 『夜明け前』 「馬籠からは、伏見屋の伊之助さんがすぐさま…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「馬籠からは、伏見屋の伊之助さんがすぐにかけつけて来てくれました。それに年寄役も一人同道で」
「そうでしたか。それを聞いて、私も安心しました。自分の留守中にこんな事件が起きて、面目丸つぶれです。この後の始末はどうなるんでしょう」
「それがですね。尾州藩のことですから、いずれ京都政府に届け出るでしょう。政治の不手際からこんな騒動になってしまったことはお詫び申し上げるくらいのことにはなるでしょう、届出はするけど、1150人以上の百姓一揆はざっと4、500人、実際はそれ以下の2、300人くらいに書き換えましょう。徒党の頭取になった者も、どうなるかわかりませんね。もしかすると、この事件は尾州藩で隠蔽してしまうかもしれません。あるいは徒党の頭取になった者だけを木曾福島に呼び出して、あの代官所で調べるくらいはあるでしょう。でも、それは以前のように、重い刑罰にはしないでしょうよ。以前なら、不届き千万だと引き回したり、さらし首にしたりしたものですが」
「でも、お父さん」
「番頭の娘をからかっただけで打ち首になった因州の武士は、東山道軍が通過した時にもいましたよ。この新政府は徒党を組むことを厳しく禁じてますよね。宿場ごとに設置した高札場にまで、浮浪者と徒党を禁止して貼ってますよ」
「ついでに、61万9500石(幕府時代に封じられた尾州家の禄高のこと)を半分にでも減らしたらどうですか」

原文 (会話文抽出)

「馬籠からは、伏見屋の伊之助さんがすぐさまかけつけて来てくれました。他に一人、年寄役も同道で。」
「そうでしたか。それを聞いて、わたしも安心しました。自分の留守中にこんな事件が突発して、面目ない。このあと始末はどうなりましょう。」
「それがです。尾州藩のことですから、いずれ京都政府へ届け出るでしょう。政務の不行き届きからこんな騒擾に及んだのは恐れ入り奉るぐらいのことは届け出るでしょう、届け出はするが、千百五十余人の百姓一揆はざっと四、五百人、実際はそれ以下の二、三百人ぐらいのことに書き出しましょう。徒党の頭取になったものも、どう扱いますかさ。ひょっとすると、この事件は尾州藩で秘密に葬ってしまうかもしれません。あるいは徒党の頭取になったものだけを木曾福島へ呼び出して、あの代官所で調べるぐらいのことはありましょうか。ナニ、それも以前のように、重いお仕置にはしますまいよ。これが以前ですと、重々不届き至極だなんて言って、引き回したり、梟首にしたりしたものですけれど。」
「でも、お父さん。」
「番太の娘に戯れたぐらいで打ち首になった因州の武士は東山道軍が通過の時にもありますよ。今度の新政府は徒党を組むことをやかましく言うじゃありませんか。宿々の御高札場にまでそれを掲げるくらいにして、浮浪者と徒党を厳禁していますよ。」
「ついでに、六十一万九千五百石(幕府時代に封ぜられた尾州家の禄高をさす)を半分にでも削るか。」


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