島崎藤村 『夜明け前』 「あなたも一つお受けください。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「あなたも一つ食べてください」
「お母さん、これは光栄です」
「でも、景蔵さん、福島での御通行があんなにスムーズに行くと
思わなかったんですよ」
「とにかく、けが人もなくね」
「あの相良惣三の事件で、私たちを呼びつけた時なんか、すごい権幕でしたよね」
「あれも人数が多かったからでしょう。福島の本陣には山村家の人が来て、恭順を誓うという請書を出したんですよ」
「うちの祖父もすごく心配してたわ。この話を聞いたら、きっと安心するでしょう。古くからの木曽福島の殿様ですからね」
「そういえば、景蔵さん、あの相良惣三のことを半蔵さんに話したら?」
「壮士ひとたび去ってまた帰らずサ。これも仕方がないのかな。3月2日に、相良惣三の一味が下諏訪の本陣に呼び出されて、その翌日に8人の重鎮が下諏訪の入り口で、斬首の上、梟首になりました。そのほかには、片方のひげと片方の眉毛を剃り落とされて、追放されたのが13人いました。私たちは一同連名で、相良惣三のために命乞いをして見ましたが、官軍の先駆などと称して勝手に進退する者を放置するわけには行かないと言うんですからね――結局、私たちの嘆願は聞き入れられませんでしたよ」

原文 (会話文抽出)

「あなたも一つお受けください。」
「お母さん、これは恐れ入りましたねえ。」
「でも、景蔵さん、福島での御通行があんなにすらすら行くとは思いませんでしたよ。」
「とにかく、けが人も出さずにね。」
「あの相良惣三の事件で、われわれを呼びつけた時なぞは、えらい権幕でしたなあ。」
「これも大勢でしょう。福島の本陣へは山村家の人が来ましてね、恭順を誓うという意味の請書を差し出しました。」
「吾家の阿爺なぞも非常に心配していましたよ。この話を聞いたら、さぞあの阿爺も安心しましょう。旧い、旧い木曾福島の旦那さまですからね。」
「そう言えば、景蔵さん、あの相良惣三のことを半蔵さんに話してあげたら。」
「壮士ひとたび去ってまた帰らずサ。これもよんどころない。三月の二日に、相良惣三の総人数が下諏訪の御本陣に呼び出されて、その翌日には八人の重立ったものが下諏訪の入り口で、断頭の上、梟首ということになりました。そのほかには、片鬚、片眉を剃り落とされた上で、放逐になったものが十三人ありました。われわれは君、一同連名で、相良惣三のために命乞いをして見ましたがね、官軍の先駆なぞととなえて勝手に進退するものを捨て置くわけには行かないと言うんですからね――とうとう、われわれの嘆願もいれられませんでしたよ。」


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