島崎藤村 『夜明け前』 「とにかく、半蔵さん、」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「とにかく、半蔵さん、」
「建武中興じゃなくて、神武創業までこの復古を広げたのは、意外でしたね。確かに機運は高まってましたよ。でも、ここまで発展するのに十年はかかるだろうと思ってました。」
「結局、今の時代が求めてるのは何かってことですよね。」
「まあ、誰がこんな意見を岩倉公あたりに吹き込んだかなんて、そんなことは詮索しない方がいいよ。ほら、半蔵さんに貸した写本だよ。あれを書いた人が言ってたじゃない、『草むらの中から発起することだ』って――それで十分です。」
「そういえば、香蔵さん、あの鉄胤先生も本当に黙ってらっしゃるなって、俺は思ってました。今になって見ると、やっぱりあの先生は活躍されてたんでしょうね。暮田正香も、まあ見ててくださいなんて言って京都へ行ったっけ。こんな日が来るまでには、どれほどの人が陰で動いたかわかりませんよ。」
「そりゃ、二人や三人の力でこの復古ができたと思う人間がいたら、それはとんでもない勘違いでしょう。」
「そうするとあの本居先生なんてが『古事記伝』を書いた本心は、ここまで道を切り開くためだったんだと思いますね。」

原文 (会話文抽出)

「とにかく、半蔵さん、」
「建武中興でなしに、神武創業にまでこの復古を持って行かれたことは、意外でしたね。そりゃ機運は動いていましたさ。しかし、ここまで出て来るには十年は待たなけりゃなるまいかと思っていましたよ。」
「結局、今の時世が求めるものは何か、ということなんですね。」
「まあ、だれがこんな意見を岩倉公あたりの耳にささやいたかなんて、そんな詮索はしないがいい。ほら、半蔵さんに貸してあげた写本さ。あれを書いた人の言い草じゃないが、草叢の中が発起です――それでたくさんです。」
「そう言えば、香蔵さん、あの鉄胤先生もほんとうに黙っていらっしゃる、そうわたしは思い思いしました。今になって見ると、やっぱりあの先生は働いていたんですね。暮田正香なぞも、まあ見ていてくれたまえなんて、そんなことを言って京都へ立って行きましたっけ。こういう日が来るまでには、どのくらいの人が陰で働いたか知れますまい。」
「そりゃ、二人や三人の力でこの復古ができたと思うものがあったら、それこそとんでもない見当違いでしょう。」
「して見るとあの本居先生なぞが『古事記伝』を書いた本志は、こうまで道をあけるためであったかと思いますね。」


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