島崎藤村 『夜明け前』 「あなた、妻籠の兄さんと何を話していらしっ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「お父さん、妻籠のおじさんと何を話してたの?子供は会所の方を覗いてきて、あなたがたがけんかしてるのかと思って、びっくりして帰ってきたよ。」
「そんなわけないだろ。今日は寿平次さんにしては珍しい話が出たんだ。あの人でもあんなに興奮することがあるんだなって思ったよ。」
「そんなに?」
「いや、けんかとかじゃないよ。寿平次さんの話は、誰かを責めたわけじゃないんだ。あんまり世の中が変わりすぎて、あの人がそれを疑ってるんだよ。」
「なんでも疑って見なきゃおじさんは納得しないもんね。」
「見てみろ、こんな混乱した時代になると、いろんな人が出てくるよ。世の中を悲観する人もいるし、おかしくなる人もいる。上州高崎にいる風流人が、木曽路の秋を見納めて、この宿場まで来て首をくくった人もいるよ。」
「そんなこと言われると不安になるよ。」
「まあ、賢くても迷ってるより、愚直だけど真っ直ぐ進む方がいいんだね。」

原文 (会話文抽出)

「あなた、妻籠の兄さんと何を話していらしったんですか。子供は会所の方へのぞきに行って、あなたがたがけんかでもしてるのかと思って、目を円くして帰って来ましたよ。」
「なあに、そんな話じゃあるものか。きょうは寿平次さんにしてはめずらしい話が出た。あの人でもあんなに興奮することがあるかと思ったさ。」
「そんなに。」
「なあに、お前、けんかでもなんでもないさ。寿平次さんの話は、だれをとがめたのでもないのさ。あんまり世の中の変わり方が激しいもんだから、あの人はそれを疑っているのさ。」
「なんでも疑って見なけりゃ兄さんは承知しませんからね。」
「ごらんな、こう乱脈な時になって来ると、いろいろな人が飛び出すよ。世をはかなむ人もあるし、発狂する人もある。上州高崎在の風雅人で、木曾路の秋を見納めにして、この宿場まで来て首をくくった人もあるよ。」
「そんなことを言われると心細い。」
「まあ、賢明で迷っているよりかも、愚直でまっすぐに進むんだね。」


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