島崎藤村 『夜明け前』 「まあ、ことしはわたしも七十になりますが、…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「まあ、私は今年で七十になりますが、こんな大風は記憶にありませんよ。お父さんに聞いてもわかると思います。本当に前代未聞です。」
「そういえば、昨晩、万福寺の和尚さん(松雲のこと)も隠居先に顔を見せてくれました。そのときに、墓地で木が倒れた話も出て、前に村で相談していた位牌堂の修理にあの材木を使いたいんだけど、どう思うかって、内々に私にも相談されました。それはとても良いご提案だと思います、って私は答えましたよ。あの和尚さんは、さすが和尚さんらしいことをおっしゃるなと思いましたっけ。」
「ところで、半蔵さん、米はどうしましょうか?」
「それです、妻籠の方で融通がつくかと考えて、今、そのことを寿平次さんにお願いしたところです。妻籠にも米がないとしたら、山口はどうでしょう。」
「山口もダメ。」
「実は昨日ですが、人をやってみましたよ。あそこにも馬籠に分けられるほどの米はないらしい。やっぱり断られました。使いの者は空しく帰ってきてしまいました。」
「困ったときには本当に困るなあ。」

原文 (会話文抽出)

「まあ、ことしはわたしも七十になりますが、こんな大風は覚えもありません。そりゃ半蔵さんのお父さんにお聞きになってもわかることです。まったく、前代未聞です。」
「そう言えば、昨晩、万福寺の和尚さま(松雲のこと)も隠宅の方へお見舞いくださいました。そのおりに、墓地での倒れ木のお話も出ましてね、かねて、村方でも相談のあった位牌堂の普請にあの材木を使いたいがどうかと言って、内々わたしまでその御相談でした。それは至極よろしい御量見です、そうわたしがお答えして置きましたよ。あの和尚さまは和尚さまらしいことを言われると思いましたっけ。」
「時に、半蔵さん、飯米のことはどうしたものでしょう。」
「それです、妻籠の方で融通がつくかと思いましてね、今、今、そのことを寿平次さんにも頼んで見たところです。妻籠にも米がないとすると、山口はどうでしょう。」
「山口もだめ。」
「実はきのうのことですが、人をやって見ましたよ。あの村にも馬籠へ分けるほどの米はないらしい。やっぱりお断わりですさ。使いの者はむなしく帰って来ました。」
「悪い時には悪いなあ。」


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