GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「香蔵さん、馬籠は君たちと違って、隣に妻籠ってのがあるからさ。福島から応援来た人たちが大平口ってとこ固めてたから、大変だったよ。」
「あの時は福島組も慌てたっけ。」
「あとで荷物を調べたら、桜沢口の方には弾ばっかりで、大平口には火薬ばっかりだったんだって。まあ、浪士を何とか倒せて良かったと思うのは俺たちだけじゃないよな。そしたら次は田沼玄蕃頭ってのが浪士を追っかけて来るってんで、またこっちが騒ぎだったよ。千人くらい連れて、全員軍の陣形で、剣付き鉄砲も用意して、浪士が通った翌日に伊那道の広瀬村に泊まるって噂で。俺んとこは浪士が泊まったから、どうなるかなぁって心配したんだ。そしたら田沼の連中は来なかったみたいで。あの時はホッとしたよ。飯田藩じゃ家老が切腹したって噂だし、清内路の関所番も……」
原文 (会話文抽出)
「中津川の方はいかがでしたか。」
「そりゃ、香蔵さん、馬籠は君たちの方と違って、隣に妻籠というものを控えていましょう。福島から出張した人たちは大平口を堅める。えらい騒ぎでしたさ。」
「いや、はや、あの時は福島の家中衆も大あわて。」
「あとになって軍用の荷物をあけて見たら、あなた、桜沢口の方へは鉄砲の玉ばかり行って、大平口の方へはまた焔硝(火薬)ばかり来ておりましたなんて。まあ、無事に浪士を落としてやってよかったと思うものは、わたしたちばかりじゃありますまい。あれから総督の田沼玄蕃頭が浪士の跡を追って来るというので、またこちらじゃ一騒ぎでしたよ。御同勢千人あまり、残らず軍の陣立てで、剣付鉄砲を一挺ずつ用意しまして、浪士の立った翌日には伊那道の広瀬村泊まりで追って来るなぞといううわさでしょう。御承知のとおり、宅では浪士の宿をしましたから、どういうことになろうかと思って、ひどく心配しました。あの翌々日には、お先荷の長持だけはまいりましたが、とうとう田沼侯の御同勢はまいりませんでした。あの時ばかりはわたしもホッとしましたよ。聞けば飯田藩じゃ、御家老が切腹したといううわさじゃありませんか。おまけに、清内路の御関所番までも……」