島崎藤村 『夜明け前』 「こういうことになるから困る。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「こうなると困るよ」
「宿の伝馬役が給料を上げろと言い出すと、助郷も黙ってません」
「半蔵さん、どう思いますか」
「そうですね」
「定助郷はぜひ残したいです。今の状況よりはいいと思います。でも、自分の希望としては、別の考えもあります」
「聞かせて下さい」
「夢みたいで笑われちゃうかもしれませんが」
「そんなことありません」
「たとえば公儀の御茶壺や日光例幣使みたいに、特別な通行には、宿の伝馬役が無給で継ぎ立てる義務があります。こういうものがあると、伝馬役がわがままになります。継ぎ立てたい荷物は継ぎ立てるけど、そうでないものは助郷に押し付けるんです。僕の夢は、宿の伝馬役と助郷の区別を無くしたいんです。みんなで助郷になれば、平等に役に出ることになります」
「みんなが助郷ですか。それは遠い先の話ですね」
「でも、寿平次さん、このままにしておくといけませんよ」
「言われてみればそうです。昔はわかりませんが、和宮様の通行が終わり、参勤交代が廃止されてから、助郷も変わってきました」
「今日は吉左衛門さんに会えて嬉しかったです。妻籠の収穫が終わって、みんな一息ついてるところですよ」

原文 (会話文抽出)

「こういうことになるから困る。」
「宿の伝馬役が給金を増してくれと言い出すと、助郷だっても黙ってみちゃいますまい。」
「半蔵さん、君の意見はどうなんですか。」
「そうですね。」
「定助郷はぜひ置いてみたい。現在のありさまより無論いいと思います。しかし、自分一個の希望としては、わたしは別に考えることもあるんです。」
「そいつを話して見てください。」
「夢が多いなんて、また笑われても困る。」
「そんなことはありません。」
「まあ、お話しして見れば、たとえば公儀の御茶壺だとか、日光例幣使だとかですね、御朱印付きの証書を渡されている特別な御通行に限って、宿の伝馬役が無給でそれを継ぎ立てるような制度は改めたい。ああいう義務を負わせるものですから、伝馬役がわがままを言うようになるんです。継ぎ立てたい荷物は継ぎ立てるが、そうでないものは助郷へ押しつけるというようなことが起こるんです。つまり、わたしの夢は、宿の伝馬役と助郷の区別をなくしたい。みんな助郷であってほしい。だれでも、同じように助郷には勤めに出るというようにしたい。」
「万民が助郷ですか。なるほど、そいつは遠い先の話だ。」
「でも、寿平次さん、このままにうッちゃらかして置いてごらんなさい。」
「そう言えば、そうですね。古いことは知りませんが、和宮様の御通行の時がまず一期、参覲交代の廃止がまた一期で、助郷も次第に変わって来ましたね。」
「きょうは吉左衛門さんにお目にかかれて、わたしもうれしい。妻籠でも収穫が済んで、みんな、一息ついてるところですよ。」


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