GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「昔のことから言うと、宿場と助郷は元々金銭的な関係ではありませんでした。人足の請負をするものもいなくて、助郷はみんな役を勤めるつもりで出てきてました。参勤交代がなくなり、諸大名の奥方や息子さんが好きな時に帰ってこられるようになりました。これを下の人が知ると、奉公する気持ちは薄れてきます」
「吉左衛門さん、それはあります。でも、参勤交代が変わったことで、江戸屋敷の奥様が帰るときの通行だけは相対雇いでいい賃金を払うことになったんです。それで人足が調子に乗るようになりました」
「そこが問題です」
「ちょっと待って下さい。助郷は問屋場に行ってよく文句を言うでしょうが、宿助成となると、どうしてもみんなに分担してもらわないといけません。まぁ、お互いのことですから」
「でも、吉左衛門さん」
「通行が多いので、物価が上がります。伝馬役は給金を上げろと言い出します。問屋場に無理がかかります。助郷からすると、宿の伝馬は街道筋に住んでいてなんとか家族を養ってますが、助けに来る田んぼの百姓は生活に困ってるのが当然というわけにはいきません。それから、助郷村の中には、疲弊したので休むことを許されたところができてきます。そういうと、お触れは不公平だという声が出てきます。旧助郷と新助郷だけでも、役を勤める気持ちは違います。助郷の不参加と言いますが、よく見ると村々によっていろいろ事情があるんです。問屋さんだって地方地方で事情が違うでしょう」
原文 (会話文抽出)
「以前からわたしはそう言ってるんですが、助郷のことは大問題ですて。」
「まあ、わたしのような昔者から見ると、もともと宿場と助郷は金銭ずくの関係じゃありませんでしたよ。人足の請負なぞをするものはもとよりなかった。助郷はみんな役を勤めるつもりで出て来ていました。参覲交代なぞがなくって、諸大名の奥方でも、若様でも、御帰国は御勝手次第ということになりましたろう。こいつは下のものに響いて来ますね。御奉公という心がどうしても薄らいで来ると思いますね。」
「吉左衛門さん、無論それもあります。しかし、御変革の結果で、江戸屋敷の御女中がたが御帰りになる時に、あの御通行にかぎって相対雇いのよい賃銭を許されたものですから、あれから人足の鼻息が荒くなって来ましたよ。」
「そこが問題です。」
「待っておくれよ。そりゃ助郷が問屋場に来て見て、いろいろ不平もありましょうがね。宿助成ということになると、どうしてもみんなに分担してもらわんけりゃならんよ。こりゃ、まあお互いのことなんだからね。」
「ところが、吉左衛門さん。」
「御通行、御通行で、物価は上がりましょう。伝馬役は給金を増せと言い出して来る。どうしても問屋場に無理ができるんです。助郷から言いますと、宿の御伝馬が街道筋に暮らしていて、ともかくもああして妻子を養って行くのに、その応援に来る在の百姓ばかり食うや食わずにいる法はないという腹ができて来ます。それに、ある助郷村には疲弊のために休養を許して、ある村には許さないとなると、お触れ当ては不公平だという声も起こって来ます。旧助郷と新助郷だけでも、役を勤めに出て来る気持ちは違いますからね。一概に助郷の不参と言いますけれど掘って見ると村々によっていろいろなものが出て来ますね。そりゃ問屋だって、あなた、地方地方によってどれほど相違があるかしれないようなものですよ。」