GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「最近は力づくで押すやつばっかだよ。こないだも九太夫さんちに人足の出し方が遅いって怒鳴り込んで、問屋場で暴れた侍がいたんだって。すごい奴がいるもんだね。その侍、土足のまま問屋場の台に飛び乗ったんだって。そこに九郎兵衛さんがいて、見てられなかったからその侍を台から突き落としたんだって。そしたら、案の定刀に手ぇ掛けたから、九郎兵衛さんがあの体で飛び降りて「斬るなら斬ってみろ」って言ったらしいよ。ちょうどその場に大名の駕籠がいて、大名が騒ぎ聞いてなんとか侍をなだめたんだって。最近は本当に気を付けないと」
「そういえば、最近10万石の大名に付き一人ずつ侍が京都に勤めるようになったって聞きましたけど、本当ですか?」
「僕も聞きましたよ」
「参勤交代が変わってからだよ。この制度は先行き不透明だね」
原文 (会話文抽出)
「叔父さん、街道の風儀も悪くなって来ましたね。」
「なんでもこの節は力ずくで行こうとする。こないだも九太夫さんの家の方へ来て、人足の出し方がおそいと言って、問屋場であばれた侍がありましたぜ。ひどいやつもあるものですね。その侍は土足のままで、問屋場の台の上へ飛びあがりましたぜ。そこに九郎兵衛さんがいました。あの人も見ていられませんから、いきなりその侍を台の上から突き落としたそうです。さあ、怒るまいことか、先方は刀に手を掛けるから、九郎兵衛さんがあの大きなからだでそこへ飛びおりて、斬れるものなら斬って見るがいいと言ったそうですよ。ちょうど表には大名の駕籠が待っていました。大名は騒ぎを聞きつけて、ようやくその侍を取りしずめたそうですがね。どうして、この節は油断ができません。」
「そう言えば、十万石につき一人ずつとか、諸藩の武士が京都の方へ勤めるようになったと聞くが、真実だろうか。」
「その話はわたしも聞きました。」
「参覲交代の御変革以来だよ。あの御変革は、どこまで及んで行くか見当がつかない。」