島崎藤村 『夜明け前』 「寿平次さん、君はよいことをしてくれた。助…

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青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「寿平次さん、いいことしてくれたよ。助郷のこと、隣の伊之助さんからも聞きましたよ。おじいちゃんも賛成してくれてます」
「これから助郷はどうなるかねえ」
「これが大変な問題なんだ。先月22日、大阪のお目付が下りてきた時、伊那から助郷が200人出たんだ。例幣使(日光への定例の勅使)の時を考えてみて。あれは4月6日だ。400人も人足を出せって言われたのに、伊那からは誰も出てない」
「結局、助郷っていうのは今のままじゃ無理でしょう」
「宿場さえ儲かればいいなんて、そういうわけじゃないでしょ。街道近くの百姓がやっていけるように考えなきゃ」
「馬籠ではできるだけそうしてきたけど、結局は東海道と同じように、定助郷にするしかないんだろう。でも、これがまた大変だろうよ」
「だいたい」
「200人、400人って、そんな大勢の人足を通行のたびに用意しろっていうのが無理ですよ」
「だから、諸大名や公役の通行をもっと簡素にするんですね」
「そういう時代になってきた」
「俺の考えじゃ、参勤交代もそのうちなくなるだろうよ。こんなに行列が頻繁にあるようじゃ、藩の財政も持たねえだろ」
「寿平次さん、じゃあ契約書にサインしてもらって、お話を聞きますから、裏の2階に上がってください。おまんさんにも会ってくださいよ」

原文 (会話文抽出)

「寿平次さん、君はよいことをしてくれた。助郷のことは隣の伊之助さんからも聞きましたよ。阿爺はもとより賛成です。」
「さあ、これから先、助郷もどうなろう。」
「これが大問題だぞ。先月の二十二日、大坂のお目付がお下りという時には、伊那の助郷が二百人出た。例幣使(日光への定例の勅使)の時のことを考えてごらん。あれは四月の六日だ。四百人も人足を出せと言われるのに、伊那からはだれも出て来ない。」
「結局、助郷というものは今のままじゃ無理でしょう。」
「宿場さえ繁昌すればいいなんて、そんなはずのものじゃないでしょう。なんとかして街道付近の百姓が成り立つようにも考えてやらなけりゃうそですね。」
「そりゃ馬籠じゃできるだけその方針でやって来たがね。結局、東海道あたりと同じように、定助郷にでもするんだが、こいつがまた容易じゃあるまいて。」
「いったい、」
「二百人の、四百人のッて、そう多勢の人足を通行のたびに出せと言うのが無理ですよ。」
「ですから、諸大名や公役の通行をもっと簡略にするんですね。」
「だんだんこういう時世になって来た。」
「おれの思うには、参覲交代ということも今にどうかなるだろうよ。こう御通行が頻繁にあるようになっちゃ、第一そうは諸藩の財政が許すまい。」
「まあ、寿平次さん、調印もしましょうし、お話も聞きましょうに、裏の二階へ来てください。おまんにもあってやってください。」


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