島崎藤村 『夜明け前』 「半蔵さん、」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「半蔵さん」
「全部がオープンになっちゃいましたよね」
「そうっすかね」
「それにしても、この山論はどうすかね。いや、草山の争いだけじゃねえっすよ。見るもの聞くものが、露骨になってきちゃいましたよね。この前も、水戸の浪人だとかいうのが家に来て、文句垂れまくったあげく、何か書くから紙と筆貸せって言うんすよ。扇子2本書かせたと思ったら、酒5合に金百文、おまけに草鞋一足せびられたんすよ。もちろん追い出しましたけど。そいつぐでんぐでんに酔っ払って、そのまま扇屋に転がり込んで、結局得右衛門さんの家で寝込んだらしいっすよ。街道筋でも大変なことになってますよ。長崎のお目付が下りで通る日だったんすけど、永井様とかいう人の家来が、人足が遅いって理由で、うちの村の問屋とケンカになって、5人で問屋をボコボコにしやがったんすよ。そん時は木刀が折れて、問屋の親父頭が4カ所もケガしました。やり方が露骨すぎますよね。君と2人で相模の三浦に行った時分――あの頃は、まだこんなじゃなかったっすよ」
「お師匠さま」

原文 (会話文抽出)

「半蔵さん、」
「すべてのものが露骨になって来ましたね。」
「さあねえ。」
「でも、半蔵さん、この山論はどうです。いや、草山の争いばかりじゃありません、見るもの聞くものが、実に露骨になって来ましたね。こないだも、水戸の浪人だなんていう人が吾家へやって来て、さんざん文句を並べたあげくに、何か書くから紙と筆を貸せと言い出しました。扇子を二本書かせたところが、酒を五合に、銭を百文、おまけに草鞋一足ねだられましたよ。早速追い出しました。あの浪人はぐでぐでに酔って、その足で扇屋へもぐずり込んで、とうとう得右衛門さんの家に寝込んでしまったそうですよ。見たまえ、この街道筋にもえらい事がありますぜ。長崎の御目付がお下りで通行の日でさ。永井様とかいう人の家来が、人足がおそいと言うんで、わたしの村の問屋と口論になって、都合五人で問屋を打ちすえました。あの時は木刀が折れて、問屋の頭には四か所も疵ができました。やり方がすべて露骨じゃありませんか。君と二人で相州の三浦へ出かけた時分さ――あのころには、まだこんなじゃありませんでしたよ。」
「お師匠さま。」


青空文庫現代語化 Home リスト