島崎藤村 『夜明け前』 「ごらん、吾家の阿爺はことしで勤続二十一年…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「お爺さんは今年で勤続21年だ。見習い時代を入れると、実際は37、8年になるんだぜ。お爺さんも頑張ってるし、祖父さんはすぐには本陣庄屋を任せなかった。それだけ大事なことなんだよな。俺は17から見習いだけど、兄貴(寿平次)みたいに事務できる人間じゃねえ。お大名泊まった時の人数とか、旅籠賃とか、燭台が何本とか細かく書き留めるような、そういうのには向いてねえ――俺は、こんなバカだ」
「なんでそんなこと言うんすか」
「だからさ。今から言っておく。兄貴も面白いこと言ってたよ。庄屋としては民意を代表するし、本陣問屋としては諸街道の交通事業に参加すると思えばいいって。でも、俺も庄屋の子だ。平田先生の弟子の一人だ。まいっか、俺なりにやってみるよ」
「半蔵様、福島から呼び出し状です。ここはどうしても、お前に出てもらわないといけません」

原文 (会話文抽出)

「ごらん、吾家の阿爺はことしで勤続二十一年だ、見習いとして働いた年を入れると、実際は三十七、八年にもなるだろう。あれで祖父さんもなかなか頑張っていて、本陣庄屋の仕事を阿爺に任せていいとは容易に言わなかった。それほど大事を取る必要もあるんだね。おれなぞは、お前、十七の歳から見習いだぜ。しかし、おれはお前の兄さん(寿平次)のように事務の執れる人間じゃない。お大名を泊めた時の人数から、旅籠賃がいくらで、燭台が何本と事細かに書き留めて置くような、そういうことに適した人間じゃない――おれは、こんなばかな男だ。」
「どうしてそんなことを言うんでしょう。」
「だからさ。今からそれをお前に断わって置く。お前の兄さんもおもしろいことを言ったよ。庄屋としては民意を代表するし、本陣問屋としては諸街道の交通事業に参加すると想って見たまえ、とさ。しかし、おれも庄屋の子だ。平田先生の門人の一人だ。まあ、おれはおれで、やれるところまでやって見る。」
「半蔵さま、福島からお差紙(呼び出し状)よなし。ここはどうしても、お前さまに出ていただかんけりゃならん。」


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