GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「喜多村先生のお供はかないませんね」
「どうして?」
「いつまでも船なんかを見てらっしゃるから」
「でも、十一屋さん、早く私たちの国でもあんないい船を作りたいじゃないですか。今じゃ薩摩でも、土佐でも、越前でも、2、3艘くらいの汽船を持っていますよ。それがみんな外国から買った船ばかりなんです。十一屋さんは『昌平丸』という船のことをお聞きになったでしょうか。あれは安政2年の夏に、薩摩藩主が3本のマストの大船を1艘作らせて、それを幕府に献上したものなんです。幕府に3本のマストの大船ができたのは、あれが初めてだと思います。ところが、どうでしょう。昌平丸を作る時には、まだネジ釘を使うことを知らなかった。まっすぐな釘ばかりで作ったもんですから、大風雨の年に、品川沖でバラバラになって壊れてしまいました」
「先生はなかなか詳しいですね」
「函館の方にだって、2本のマストの帆前船がまだ2艘しかできていません。1艘は『函館丸』。もう1艘の船の方は『亀田丸』。高田屋嘉兵衛が呼び寄せた豊治という船大工がそれを造りましたがね」
「先生は函館で船の世話までなさるんですか」
「まあ、そんなものです。でも、こんな下手な医者に診てもらっちゃダメだなんて、函館の人は皆そう言ってるんですよ」
「下手な医者」
原文 (会話文抽出)
「やっぱりよくできていますね。同じ汽船でも外国のはどこか違いますね。」
「喜多村先生のお供はかなわない。」
「どうしてさ。」
「いつまででも船なぞをながめていらっしゃるから。」
「しかし、十一屋さん、早くわれわれの国でもああいうよい船を造りたいじゃありませんか。今じゃ薩州でも、土州でも、越前でも、二、三艘ぐらいの汽船を持っていますよ。それがみんな外国から買った船ばかりでさ。十一屋さんは昌平丸という船のことをお聞きでしたろうか。あれは安政二年の夏に、薩州侯が三本マストの大船を一艘造らせて、それを献上したものでさ。幕府に三本マストの大船ができたのは、あれが初めてだと思います。ところが、どうでしょう。昌平丸を作る時分には、まだ螺旋釘を使うことを知らない。まっすぐな釘ばかりで造ったもんですから、大風雨の来た年に、品川沖でばらばらに解けてこわれてしまいました。」
「先生はなかなかくわしい。」
「函館の方にだって、二本マストの帆前船がまだ二艘しかできていません。一艘は函館丸。もう一艘の船の方は亀田丸。高田屋嘉兵衛の呼び寄せた人で、豊治という船大工があれを造りましたがね。」
「先生は函館で船の世話までなさるんですか。」
「まあ、そんなものでさ。でも、こんな藪医者にかかっちゃかなわないなんて、函館の方の人は皆そう言っていましょうよ。」
「藪医者」