島崎藤村 『夜明け前』 「これはなかなかやかましいものだ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「これはなかなかやかましいものですね」
「まだそのほかに、名簿を出すことになってるんです。年齢、父親、職業、誰の紹介かっていうのが書いてあるんです」
「半蔵さん」
「あなたの誓詞には『古学』って言葉がよく出てきますけど、国学をやる人ってそんなに古代に目標を置くんですか」
「そりゃ、そうですよ。あなた」
「過去ってそんなに意味があるんですか」
「あなたが言う過去は死んだ過去でしょう。ところが、篤胤先生とかが考えた過去は生きてる過去なんです。明日は、明日はって、みんな明日は来るのを待ってるけど、そんな明日はいつまで待っても来ません。今日は、あなた、あっという間に過ぎ去っていきます。過去こそが真実じゃないですか」
「あなたの言うことはわかります」
「でも、国学者だって、そう簡単に過去を目標にはしてないですよ。中世以降は乱れてきたと考えてるんです」
「ちょっと待ってください。私は詳しくないのでよくわかりませんが、平田派の学問は偏りすぎてるような気がします。こんな時代になってきて、そんな古学ってどうなるんですかね」
「そこですよ。外国の影響を受ければ受けるほど、私たちは古代の方を振り返るようになりました。それは私だけじゃありません、中津川の景蔵さんや香蔵さんもそうです」

原文 (会話文抽出)

「これはなかなかやかましいものだ。」
「まだそのほかに、名簿を出すことになっています。行年何歳、父はだれ、職業は何、だれの紹介ということまで書いてあるんです。」
「半蔵さん。」
「君の誓詞には古学ということがしきりに出て来ますね。いったい、国学をやる人はそんなに古代の方に目標を置いてかかるんですか。」
「そりゃ、そうさ。君。」
「過去はそんなに意味がありますかね。」
「君のいう過去は死んだ過去でしょう。ところが、篤胤先生なぞの考えた過去は生きてる過去です。あすは、あすはッて、みんなあすを待ってるけれど、そんなあすはいつまで待っても来やしません。きょうは、君、またたく間に通り過ぎて行く。過去こそ真じゃありませんか。」
「君のいうことはわかります。」
「しかし、国学者だって、そう一概に過去を目標に置こうとはしていません。中世以来は濁って来ていると考えるんです。」
「待ってくれたまえ。わたしはそうくわしいことも知りませんがね、平田派の学問は偏より過ぎるような気がしてしかたがない。こんな時世になって来て、そういう古学はどんなものでしょうかね。」
「そこですよ。外国の刺激を受ければ受けるほど、わたしたちは古代の方を振り返って見るようになりました。そりゃ、わたしばかりじゃありません、中津川の景蔵さんや香蔵さんだっても、そうです。」


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