島崎藤村 『夜明け前』 「どうも今年は正月の元日から、いやに陽気が…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「どうも今年は正月の元日から、妙に暖かくて、おかしかったんだよ」
「でしょ。元日に草履で年始回りなんて、木曽じゃ聞いたことねえよ。おまけに、寺道の向こうに椿が咲いたり、お餅を搗く時期なのにヨモギが青々してたり。あれは全部、この地震が来る知らせだったんだよ。それにしても、吉左衛門さん、うちは仙十郎の披露を済ませたばかりで、おかげであいつ組頭になれた。俺も先祖に顔が立ったって思って祝い物を片付けてたところへ、この地震だよ」
「申年の善光寺の地震が大きかったなんて言っても、比べ物になんないって。ほら、寅年6月の地震の時だって、こんなんじゃなかった」
「いや、こんな地震は前代未聞だよ」

原文 (会話文抽出)

「どうも今年は正月の元日から、いやに陽気が暖かで、おかしいおかしいと思っていましたよ。」
「それさ。元日に草履ばきで年始が勤まったなんて、木曾じゃ聞いたこともない。おまけに、寺道の向こうに椿が咲き出す、若餅でも搗こうという時分に蓬が青々としてる。あれはみんなこの地震の来る知らせでしたわい。なにしろ、吉左衛門さん、吾家じゃ仙十郎の披露を済ましたばかりで、まあおかげであれも組頭のお仲間入りができた。わたしも先祖への顔が立った、そう思って祝いの道具を片づけているところへ、この地震でしょう。」
「申年の善光寺の地震が大きかったなんて言ったってとても比べものにはなりますまいよ、ほら、寅年六月の地震の時だって、こんなじゃなかった。」
「いや、こんな地震は前代未聞にも、なんにも。」


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