島崎藤村 『夜明け前』 「おれにかなし。どうも大旦那にお酌していた…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「俺には申し訳ねえ。大旦那に酌してもらっちゃあ」
「大旦那――こないだの上納金の話ですよ。ほかの事と違うんで、みんなで話し合って、出すことにしたんです」
「あゝ、あの国恩金のことか」
「それが大旦那、百姓はもちろん、豆腐屋、按摩まで出すって話なんで、俺たちも見てられねえ。18人で2両2分とか、56人で3両2分とか、村でもそれぞれ出す額を決めてるみたいだけど、俺たちは7人で、1人1朱ずつ出すことにしたんです」
「やめてよ。こんな席で上納金の話なんて。伊勢の神風が吹いたら、そんな唐人船なんて吹き飛ばされるよ。くよくよするな。それより、飲もう」
「やっぱ旦那はすごいこと言うな」
「上の伏見屋の旦那」
「俺もあんたに賛成だな。徳川様の権威があれば、4艘や5艘の唐人船なんてどうってことはない」

原文 (会話文抽出)

「おれにかなし。どうも大旦那にお酌していただいては申しわけがない。」
「大旦那――こないだの上納金のお話よなし。ほかの事とも違いますから、一同申し合わせをして、お受けをすることにしましたわい。」
「あゝ、あの国恩金のことかい。」
「それが大旦那、百姓はもとより、豆腐屋、按摩まで上納するような話ですで、おれたちも見ていられすか。十八人で二両二分とか、五十六人で三両二分とか、村でも思い思いに納めるようだが、おれたちは七人で、一人が一朱ずつと話をまとめましたわい。」
「よせ。こんな席で上納金の話なんか。伊勢の神風の一つでも吹いてごらん、そんな唐人船なぞはどこかへ飛んでしまう。くよくよするな。それよりか、一杯行こう。」
「どうも旦那はえらいことを言わっせる。」
「上の伏見屋の旦那。」
「おれもお前さまに賛成だ。徳川さまの御威光で、四艘や五艘ぐらいの唐人船がなんだなし。」


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