三遊亭圓朝 『名人長二』 「長さん、珍しく今夜は御機嫌だねえ…お前さ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『名人長二』

現代語化

「長さん、珍しく機嫌いいじゃん…お前の居場所がわからねえって、親父やみんな心配してたぜ」
「あったかいから食べなよ、夜食はまだだろう?大澤さんからもらったブリが味噌漬になってるから、それで一杯食ってけよ」
「ああありがとうだけど、今食ったばっかりだから」
「親方……俺、遠くに行くつもりです」
「そんなこと言ってるけど、どこ行くんだ」
「京都に行って利齋の弟子になるつもりで、家を片付けたんです」
「それもいいけど、俺も昔は利齋の弟子で、いつも話してるように三年間根気よく頑張ったおかげで、今の俺があるんだから、今の利齋くらいには負けないつもりなんだけど……そうそうあの鹿島さんからの注文で、島桐の火鉢と桑の棚を作ったけど、棚の方は俺でも気に入ってるから見てくれよ」
「どうだ長二……この遠州透はいいだろう、引き出しの作りとか誰にも負けないつもりだ、ほら、こうやって開くんだ」
「確かに巧いけど、そんなに自慢するほどでもないぞ、この留めの作りとか透の仕上げが雑だ」
「なんだって、こう兄貴……親方の作ったものを雑だって、お前生意気だな」
「生意気じゃねえよ、親方が作ったものだって失敗作もあるだろう、この棚は見た目はいいけど、5、6年も経ったら留めが緩んで使い物にならなくなるから、雑だって言ってるんだ」
「なんだって、俺の親父が作ったものがハンマーで叩いても壊れないことは知ってるだろう」
「それが壊れるようにできてるからダメなんだよ」
「どうしたんだ、今日はおかしいぜ」
「どうもしねえよ、いつも通りまじめに長二やってるだけだ」
「それがどうして親父の仕事をけなすんだ」
「けなすところがあるからけなすんだよ、百聞は一見に如かずだ、ハンマー貸せ、ぶっ壊してやるから」
「面白い、壊してみろよ」

原文 (会話文抽出)

「長さん、珍しく今夜は御機嫌だねえ…お前さんの居る所が知れないと云って、お父さんや皆が何様に心配をしていたか知れないよ」
「温いからおあがり、お夜食は未だゞろうね、大澤さんから戴いた鰤が味噌漬にしてあるから、それで一膳おたべよ」
「えゝ有がとうがすが、今喰ったばかしですから」
「親方……私は遠方へ行く積りです」
「其様なことをいうが、何所へ行くのだ」
「京都へ行って利齋の弟子になる積りで、家をしまったのです」
「それも宜いが、己も先の利齋の弟子で、毎も話す通り三年釘を削らせられた辛抱を仕通したお蔭で、是までになったのだから、今の利齋ぐれえにゃア指す積りだが……むゝあの鹿島さんの御注文で、島桐の火鉢と桑の棚を拵えたがの、棚の工合は自分でも好く出来たようだから見てくれ」
「どうだ長二……この遠州透は旨いだろう、引出の工合なぞア誰にも負けねえ積りだ、これ見ろ、此の通りだ」
「成程拙くアねえが、そんなに自慢をいう程の事もねえ、此の遣違えの留と透の仕事は嘘だ」
「何だと、コウ兄い……親方の拵えたものを嘘だと、手前慢心でもしたのか」
「馬鹿をいうな、親方の拵えた物だって拙いのもあらア、此の棚は外見は宜いが、五六年経ってみねえ、留が放れて道具にゃアならねえから、仕事が嘘だというのだ」
「何だと、手前父さんの拵えた物ア才槌で一つや二つ擲ったって毀れねえ事ア知ってるじゃアねえか」
「それが毀れる様に出来てるからいけねえのだ」
「何うしたんだ、今夜は何うかしているぜ」
「何うもしねえ、毎もの通り真面目な長二だ」
「それが何故父さんの仕事を誹すのだ」
「誹す所があるから誹すのだ、論より証拠だ、才槌を貸しねえ、打毀して見せるから」
「面白い、毀してみろ」


青空文庫現代語化 Home リスト