GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『名人長二』
現代語化
「ありがとうございますけど、ちょっと急ぎの仕事が」
「今日はもう仕事はできないと思うな。うーん、仕事といえば私も一つ煙草盆を作ってほしいんだけど、どんなのがいいかな…これは前の住職が使ってたものなんだけど、荒っぽく扱ったみたいでこんなに壊れてしまって役に立たないんだ。この落板はまだ使えるから、この落板に合わせていい感じに作ってほしいんだ」
「毎月お墓参りしたいんですけど、家業が忙しいので体が自由にならないんです。それでついお寺にいけなくなってます」
「お忙しいお勤めですからなかなかお寺に行く暇はないですよね。暇がある人でも仏様から催促が来るわけじゃないですから、ついつい怠けちゃうものですよ」
「そうなんですよね…2ヶ月くらいお参りできてない間に、お堂がすごく立派になりましたね。あの左側にある経机はどなたかの寄付ですか? あんな立派なものは見たことがありません。腕のいい職人が作ったんでしょうね」
「あの机かい? あれはここにいるこの方が寄付したものだよ」
「そうなんですか…これは失礼しました…はじめまして。私は幸兵衛と申します…さっきお聞きしたんですけど、あの経机はあなたがお作りになったんですか? どうやって誰に注文したんですか?」
「はい、あの、私が作りました。仕事で余った木で作ったので、思うようにできていませんが」
「えー、じゃああなたは指物を作ってるんですか?」
「はは、これが指物師で有名な不器用イナヤナ長二という者です」
「ふーん、では噂に聞く名人の木工屋…えー、あなたがその親方ですか? 本所の〆切にお住まいでしたっけ?」
「その通りです」
「じゃあ柳島の私の別荘から近いです…で、お目にかかったついでに、客用火鉢を20個と煙草盆を5、6組作ってもらいたいんですけど。桐でも桑でも構いません。いつ頃までにできますか?」
「すぐにできるわけじゃないよ。いいものを作るには、木を10年以上乾燥させて筋の良いものを探さなきゃならないから」
「どうかお願いします。近いので、近日中に柳島の家へ一度来てください。まだ普請が終わったばかりなので、いろいろ作りたいものがあります」
「はい、私は独身で忙しいので、必ず行くと約束はできません」
「そうなら私が近日中にお宅に伺います」
「どうかそうしてください」
原文 (会話文抽出)
「まア少しお待ちなさい、今のお方は浅草鳥越の龜甲屋幸兵衛様というて私の一檀家じゃ、なか/\の御身代で、苦労人の上に万事贅沢にして居られるから、お近附になって置くが好い」
「へい有難うございますが、少し急ぎの仕事が」
「今日は最う仕事は出来はすまい、ムヽ仕事と云えば私も一つ煙草盆を拵えてもらいたいが、何ういうのが宜いかな……これは前住が持って居ったのじゃが、暴うしたと見えて此様に毀れて役にたゝんが、落板はまだ使える、此の落板に合わして好い塩梅に拵えてもらいたいもんじゃ」
「毎月墓参をいたしたいと思いますが、屋敷家業というものは体が自由になりませんので、つい不信心になります」
「お忙しいお勤めではなか/\寺詣りをなさるお暇はないて、暇のある人でも仏様からは催促が来んによって無沙汰勝になるもので」
「まア左様いう塩梅で……二月ばかり参詣をいたさんうちに御本堂が大層お立派になりました、彼の左の方にある経机は何方からの御寄附でございますか、彼様な上作は是まで見ません、余ぽど良い職人が拵えた物と見えます」
「あの机かな、あれは此処にござる此の方の御寄附じゃて」
「へい左様ですか……これは貴方御免なさい……へい初めてお目にかゝります、私は幸兵衛と申す者で……只今承まわれば彼の経机を御寄附になったと申すことですが、あれは何処の何と申す者へお誂えになったものでございます」
「へい、あれは、ヘイ私が拵えたので、仕事の隙に剰木で拵えたのですから思うように出来ていません」
「へえーそれでは貴方は指物をなさるので」
「はて、これが指物師で名高い不器用イヽヤナニ長二さんという人さ」
「フム、それでは予て風聞に聞いた名人の木具屋さん……へえー貴方が其の親方でございますか、慥か本所の〆切とかにお住いですな」
「左様です」
「それでは柳島の私の別荘からは近い…就てはお目にかゝったのを幸い、差向き客火鉢を二十に煙草盆を五六対拵えてもらいたいのですが、尤も桐でも桑でもかまいません、何時頃までに出来ますね」
「早くは出来ません、良く拵えるのには木の十年も乾した筋の良いのを捜さなけれアいけませんから」
「どうか願います、お近いから近日柳島の宅へ一度来てください、漸々此間普請が出来上ったばかりだから、種々誂えたいものがあります」
「へい、私はどうも独身で忙しないから、屹度上るというお約束は出来ません」
「そういう事なら近日私がお宅へ出ましょう」
「どうか左様願います」