三遊亭圓朝 『名人長二』 「おい親方、この仏壇の板は此方から出したの…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『名人長二』

現代語化

「おい親方、この仏壇の板はこっちから出したんだから、100両ってのはおかしいんじゃないの?」
「板をいただいたことは知ってますよ。何も間違ってません」
「これだけの手間で100両ってのはちょっと高すぎない?」
「そう思われるでしょうけど、それだけ手間がかかったんです。100両出せないなら元の板をお返ししますから仏壇は持って帰ります…素人にはわからないでしょうけど」
「親方、ちょっと待って。素人にわからないって言うけど、100両の価値がある細工がどこにあるんだって?」
「はい…旦那さんが注文されたとき、なんておっしゃいましたか? この仏壇は大切なものだから、火事で持ち出すとき、他のものが当たっても落としても壊れないようにしたい。丈夫で見た目が悪いのは困るって。無理な注文でしたが、できないことじゃないんで、釘を一本も他人に任せず一生懸命魂を込めて、なんとか注文通りに作りました…私は注文と違うものをこっそり納めるような不親切なことは大嫌いです…最初手間代はいくらでも払うって言われたから引き受けたんですけど、こういうものはでき上がってみないといくらいただいてもいいか分かりません。この仏壇に打ち付けてある64本の釘には一本一本私の魂が込められてますから、かなり安い手間料だと思います」
「ふーん、その説明なら100両は安いんだな。でも、火事の時に竹の長持の棒なんかにぶつけられたらこの合わせ目が壊れそうだけど」
「そのご心配はごもっともですが、外からどんなものがぶつかっても釘が外れるようなことはありません。ただし、中から強くぶつけると外れるかもしれません。でも仏壇ですから、中からぶつけるものといえば花立が倒れるとか香炉が転ぶ程度なので、心配いりません。嘘だと思うなら、ちょうどさっき途中で買った金槌を持っていますから、それで思いっきり叩いてみてください」

原文 (会話文抽出)

「おい親方、この仏壇の板は此方から出したのだよ、百両とはお前間違いではないか」
「へい、板を戴いた事ア知っています、何も間違いではございません」
「是だけの手間が百両とは少し法外ではないか」
「そう思召しましょうが、それだけ手間がかゝったのです、百両出せないと仰しゃるなら宜うがす元の通りの板をお返し申しますから仏壇は持って帰ります……素人衆には分りますまいよ」
「親方、まア待ちなさい、素人に分らないというが、百両という価値の細工が何処にあるのだえ」
「はい……旦那御注文の時何と仰しゃいました、この仏壇は大切の品だから、火事などで持出す時、他の物が打付っても、又落ことしても毀れないようにしたいが、丈夫一式で見てくれが拙くっては困ると仰しゃったではございませんか、随分無理な注文ですが、出来ない事はありませんから、釘一本他手にかけず一生懸命に精神を入れて、漸々御注文通りに拵え上げたのです……私ア注文に違ってる品を瞞かして納めるような不親切をする事ア大嫌えです……最初手間料に糸目をつけないと仰しゃったから請負ったので、斯ういう代物は出来上ってみないと幾許戴いて宜いか分りません、此の仏壇に打ってある六十四本の釘には一本/\私の精神が打込んでありますから、随分廉い手間料だと思います」
「フム、その講釈の通りなら百両は廉いものだが、火事の時竹長持の棒でも突かけられたら此の辺の合せ目がミシリといきそうだ」
「その御心配は御道理ですが、外から何様な物が打付っても釘の離れるようなことア決してありませんが中から強く打付けては事によると離れましょう、併し仏壇ですから中から打付かるものは花立が倒れるとか、香炉が転るぐれえの事ですから、気遣えはございません、嘘だと思召すなら丁度今途中で買って来た才槌を持ってますから、これで打擲ってごらんなせい」


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