三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「春部梅三郎は腰元の若江と密通して逃げたと…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「春部さんって腰元の若江さんと浮気して逃げちまったんだって?」
「そ、そうなんです。本当に申し訳ございませんでした」
「ま、見つかったわけじゃないし、今までちゃんと仕事もやってたんだよな? ただ、ちょっと浮かれちゃったんで、女に手を出して家出したってことなんでしょ? まだクビになってるわけじゃないから、いつか許されて戻れるよ。それに若江って小姓も、小さい頃からずっと仕えてて、最近元気なくなって辞めたんだって? それも戻れるんじゃないの?
それでさー、大殿様ももう55歳で、最近は病気もよくなったみたいだけど、体の具合はよくないみたいで、今回の病気は心配なんだよ。もしもしも、もし亡くなったら跡を継ぐのは誰がいいと思う? 春部も祖五郎もクビになっちゃってはいても、代々の恩は忘れないでしょ。恩を感じてるんなら、誰に跡を継いでもらいたい? ちょっと考えてみてよ」
「僕としては、まだ4、5歳の若様が何もわかってないですけど、もし大殿様が亡くなったら、お下屋敷にいる紋之丞様が跡を継ぐのがいいと思います」
「それはちょっと違うんじゃない? 菊様は正統な血筋だろ? 4歳でも菊様が継ぐべきだと思うよ。弟に継がせるのはなんか道理に外れてる気がする」
「いや、それは違うと思います」
「違うわけないだろ」
「でも4歳の子供に跡を継がせたら、やっぱ後見人が必要でしょ? それならお下屋敷の紋之丞様に継がせて、菊様が大きくなってから順に継ぐのが当然だと思います」
「いやいや、血筋は別だろ。親なら誰だって自分の子供が可愛いもんだし、跡を継がせれば殿様も気持ちよくあの世に行けるだろ。兄弟の仲はいいけど、やっぱり弟に継がせると気が重いと思うよ。4歳でも正統な血筋なんだから、若様を後継ぎにするのが当然だと思う」
「それはご家老様らしい考え方ですね。紋之丞様に継がせれば、何でも都合がいいんですよ。弟の方は文武両道で賢いし、大殿様もよく褒めてたみたいですけどね」
「それはお前らにはわからないことだ。とにかく菊様が一番なんだよ」
「えーと、松蔭の横合から失礼しますけど、祖五郎殿のおっしゃることがもっともだと思います。菊様はまだ4歳で何もわかってない方をお世継ぎにするのは、ちょっと無理があるように思います。菊様が成人した後は別として、この14、5年は梅之丞様に継がせるのが自然だと思います」
「そうじゃないだろ」
「いや、誰が何を言ってもそうだと思います」

原文 (会話文抽出)

「春部梅三郎は腰元の若江と密通して逃げたという事だったの」
「はい、誠に恥入った事でございます」
「うん、それが露顕した訳でもなし、是まで勤め向も堅く、ほんの若気の至りで、女を連れて逐電いたしたのじゃが、未だお暇の出たわけではなし、只家出をした廉だから、お詫をして帰参の叶う時節もあろう、若江という小姓も少さい時分から奉公をしていた者で、先年体好くお暇になったとの事、是も出入りは出来ようかと思う、所でお前たちに私が問うがな、大殿様は今年はもう五十五にお成りなさる、昨今の処では御病気も大きに宜いようじゃが、どうもお身上が悪いので、今度の御病気は數馬決して安心せん、もしお逝去にでもなった時には御家督相続は誰が宜かろう、春部だの祖五郎はお暇になってゝも、代々の君恩の辱ない事は忘却致すまい、君恩を有難いと考えるならば、御家督は何う致すが宜しいか少しは考えも有ろう」
「手前の考えでは若様は未だお四才かお五才で御頑是もなく、何弁えない処のお子様でございますから、万々一大殿様がお逝去れに相成った時には、お下屋敷にならせられる紋之丞様より他に御家督御相続のお方は有るまいかと存じます」
「それは些と違うだろう、菊様はお血統だ、仮令お四才でも菊様が御家督にならなければなるまい、御舎弟を直すのは些と道理に違って居るように心得る」
「いや、それは違って居りましょう」
「違っては居らん」
「併しお四才になる者を御家督になされば、矢張御後見が附かなければなりません、それよりは矢張お下屋敷の御舎弟紋之丞様が御家督御相続になって、菊様追々御成人の後、御順家督に相成るが御当然のことゝ存じます」
「いや/\然うでない、お血統は別だ、誰しも我子は可愛もので、御実子を以て御家督相続と云えば殿様にもお快くお臨終が出来る、御兄弟の御情合も深い、深いなれども御舎弟様が御家督と云えばお快くないから御臨終が悪かろうと思う、どうもお四才でもお血統はお血統、若様を御家督にするが当然かと心得るな」
「是は御家老様にお似合いなさらんお言葉で、紋之丞様が御家督相続に相成れば、万事御都合が宜しい事で、お舎弟様は文武の道に秀で、お智慧も有り、先ず大殿様が御秘蔵の御方度々お賞めのお言葉も有りました事は、父から聞いて居ります」
「それはお前たちの知らん事、何でも菊様に限る」
「えゝ、松蔭横合より差出ました横槍を入れます、これは春部氏祖五郎殿の申さるゝが至極尤もかと存じます、菊様は未だお四才で、何のお弁えもない頑是ない方をお世嗣に遊ばしますのも、些と不都合かのように存じます、菊様御成人の後は兎も角こゝ十四五年の間は梅の御印様が御家督になるのが手前に於ては当然かと、憚りながら存じます」
「然うじゃアあるまい」
「いや/\それは誰が何と申しても左様かと心得ます」


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