三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「手伝っておくれ、解いて見よう、綿は何様な…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「「手伝って。開けてみよう。綿は何色?」
「おや、定さん」
「はい」
「こんな手紙が出てきたよ」
「おや、襟の中からって変ですね。どうして?」
「俺にも分からないけど、どうして襟の中に……怪しいね」
「女物の襟に手紙を入れておくのは怪しいですよね。情夫にでもやるんでしょう」
「でも、それにしても襟の中に……怪しいじゃないか」
「そうですね。開けてみてくださいよ。何て書いてあるか」
「勝手に封を切るのはまずいだろう」
「これをあなたのものにして、封を開けてみて、必要な手紙なら先方に返せばいいじゃないですか」
「なるほどね。封が固くしてあるよ。何て書いてあるんだろう」
「遠慮なさらないでください。お守りをお守りとして襟に縫い付けておくことはよくありますからね。疫病除けに」
「※※様より菊よりって書いてある。親のところに出したんだ」
「でも、親に手紙を出すのに、封を固くして襟に縫い付けておくのは変ですね。芸者は自分の情人を親に見立てて、世間の人に分からないように『お父様』とかごまかすって聞いたことがありますけどね」
「開けてみようかな」
「開けてみてくださいよ」
「面白いことが書いてあるかなあ」
「きっとラブレターがいろいろ書いてあるんでしょうよ」
「…文にて申上げます※…、決まってるよ」
「はい、それから」
「…ますますご機嫌よくお過ごしになっていらっしゃること、陰ながらうれしく存じます※」
「定型文ですね。でも、色男に出す手紙にしては改まりすぎているような気がします」
「そうだね。そうすると……私、主人の松蔭のことで……神原四郎治と相談して渡辺様を殺そうという悪だくみ……おや」
「え……どういうことなんですか?」
「黙ってて。……それだけでなく、水飴の中に毒薬を仕込んで、若殿様に差し上げよう、というふうに2人が共謀しているのを、私が偶然立ち聞きしてびっくりしました」
「驚きですね。誰なんですか?」
「大声を出さないで。世間に知れたら大変だよ……一大事なので手紙に書いて申し上げようと急いで書きましたが、もし落としてしまったら他の人の手に渡ってしまっては大名が困ることになるので心配になり、袷の襟に縫い込んで提出します。添え書きのとおりお宅でこれを開けてご覧になった上、渡辺様のお兄様にお見せになって、そっと重役の方に伝えてくださるようお願い申し上げます。また、お伝えしたいことはたくさんありますが、急がせるので書き残せませんでした。覚えておいて詳しく申し上げます。めでたくかしこ。※様、兄上様、菊…と……菊ってなんだっけ。あの、新しい役の松蔭の家に奉公してた女中、菊って言ってなかったっけ?」
「私は知りません」
「松蔭の家にいた女中が殺されたって聞いたことがあるから、旦那様に聞いても関係ないことだと言われるから、別に詳しく聞くこともなかったんだけど、これは大変なことだよ」
「お帰りです」
「旦那がお帰りになった」
「ご帰宅なさいませ」
「お帰りなさい」
「ああ、すぐに着替えます」
「お着替えください。定さん、お召し替えですよ。すぐにお湯を差し上げます。さぞおつかれでしょう」
「ああもう、とても疲れたよ。はー、どうも夜眠れないんだ。すごく疲れた。眠れないってのは本当にひどいもんだ」

原文 (会話文抽出)

「手伝っておくれ、解いて見よう、綿は何様なか」
「おや、定や」
「はい」
「此様な手紙が出たよ」
「おや/\襟ん中から奇態でございますね、何うして」
「私にも分らんが、何ういう訳で襟の中へ……訝しいの」
「女物の襟へ手紙を入れて置くのは訝しい訳でございますが、情夫の処へでも遣るのでございましょう」
「だってお前それにしても襟の中へ……訝しいじゃアないか」
「左様でございますね、開けて御覧遊ばせよ、何と書いてあるか」
「無闇に封を切っては悪かろう」
「これを貴方の物にして、此の手紙を開けて御覧なすって、若し入用の手紙なれば先方へ返したって宜いじゃア有りませんか」
「本当に然うだね、封が固くしてあるよ、何と書いてあるだろう」
「お禁厭でございますか知らん、随分お守を襟へ縫込んで置く事がありますから、疫病除に」
「父上様まいる菊よりと書いてある、親の処へやったんで」
「だって貴方親の処へ手紙をやるのに、封じを固くして襟の中へ縫付けて置くのは訝しゅうございますね、尤も芸者などは自分の情郎や何かを親の積りにして、世間へ知れないようにお父様/\とごまかすてえ事を聞いて居りますよ」
「開けて見ようかの」
「開けて御覧遊ばせよ」
「面白いことが書いてあるだろうの」
「屹度惚気が種々書いてありましょうよ」
「…文して申上※…、極っているの」
「へえ、それから」
「…益々御機嫌能御暮し被成候御事蔭ながら御嬉しく存じ上※」
「定文句でございますね、併し色男の処へ贈る手紙にしちゃア改り過ぎてるように存じますね」
「然うだの、左候えば私主人松蔭事ス……神原四郎治と申合せ渡邊様を殺そうとの悪だくみ……おや」
「へえ……何ういう訳でございましょう」
「黙っていなよ、……それのみならず水飴の中へ毒薬を仕込み、若殿様へ差上候よう両人の者諜し合せ居り候を、図らず私が立聞致し驚き入り候」
「呆れましたね、誰でございますえ」
「大きな声をおしでないよ、世間へ知れるとわるいわ……一大事ゆえ文に認め差上候わんと取急ぎ認め候え共、若し取落し候事も有れば、他の者の手に入っては尚々お上のために相成らずと心配致し、袷の襟へ縫込み差上候間、添書の通りお宅にてこれを解き御覧の上渡邊様方に勤め居り候御兄様へ此の文御見せ内々御重役様へ御知らせ下され候様願い上※尚、申上度事数々有之候え共取急ぎ候まゝ書残し※おお目もじの上委しく可申上候、芽出度かしく、父上様兄上様、菊…と、……菊というのは何かの、彼の新役の松蔭の処に奉公していた女中は菊と云ったっけかの」
「私は存じませんよ」
「松蔭の家にいた女中が殺されたような事を聞いたから、旦那様に聞いてもお前などは聞かんでも宜い事だと仰しゃるから、別段委しくお聞き申しもしなかったが、是は容易な事ではないよ」
「お帰りい」
「旦那がお帰り遊ばした」
「お帰り遊ばしまし」
「お帰り遊ばせ」
「あい、直に衣服を着換えよう」
「お着換遊ばせ、定やお召換だよ、お湯を直に取って、さぞお疲れで」
「いやもう大きに疲れました、ハアーどうも夜眠られんでな、大きに疲れました、眠れんと云うのは誠にいかんものだ」


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