三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「黙れ、何だ斯様のものを以て何の云訳になる…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「黙れ!こんなものを持ってきても、何の言い訳になるんだ。わけがわからない。綾がどうの、絹がどうの、綿がどうのって」
「私も匿名書なので意味がよくわかりませんが、私の判断ではお屋敷の一大事だと思います」
「どういうことだ?」
「綾は操を意味し、絹と綿は裂けるものなので、今夜中に裂くというのは、あなたのお父様のお名前を隠して書いたのではと考えられます。渡邊織江の『織』の字にちなんで、このようなことを書いたのではないでしょうか。この『花』は私を指す言葉で、『今を春辺と咲くや此の花』という古歌に掛けて、梅三郎の名前を隠したのです。私の文を現場に落としておけば、春部に罪を着せて後は、若江に心を寄せる者がお屋敷にいると見せかけることができると思います。それを『青茎の蕾の儘貴殿の許へ送る』というのは、若江を世話する約束をしたという意味でしょうか。『好文木』は若殿様を指す言葉なのではないかと考えられます。お下屋敷を『梅の御殿』と言いますから、梅の別名である好文木は若殿、紋之丞様のことではないでしょうか。お秋の方のお腹の菊之助様を後継ぎにしようという策略ではないかと思います。その際、この密書を半分に裂いて逃げたのが、松蔭大蔵の家来である助という人物です。この密書を奪われないように、助は最近按摩に化けてお屋敷に忍び込み、私の寝室に忍び込んでこの密書を盗もうとしましたが、取り押さえて縛りあげ、翌朝取り調べるつもりで物置に入れておきました。しかし、縄が解けたのか逃げてしまったので、確証を得ることはできません。ですが、『常磐』というのは明らかに松蔭の匿名で、大蔵の家来の助が頼まれて尾久の里に持って行ったことは調べました。また、『千早殿』と書いてあるのはわかりませんが、おそらく神原のことではないかと思います。お屋敷内にこのような悪人がいて、弟の紋之丞様を亡き者にして妾腹の菊之助様を世に出そうという企みを知ったら、黙っているわけにはいきません。これは私の考えなので、他人に軽々しく話すべきではありませんが、再考していただければと思います。私は決して逃げたりはしません。私たちはどちらも長年お世話になった主家の大事です。証拠にもならないものかもしれませんが、国家老に相談に行ってこようと思います。私一人、あなた一人ではダメですから、二人でお城代に話をしてご意見を伺いたいのですが、いかがでしょうか?」

原文 (会話文抽出)

「黙れ、何だ斯様のものを以て何の云訳になる、これは何たることだ、綾が取悪いとか絹を破るとか、或は綿を何うとかすると些とも分らん」
「いえ、拙者にも匿名書で其の意味が更に分りませんが、拙者の判断いたしまする所では、お屋敷の一大事と心得ます」
「それは何ういう訳」
「左様、絹木綿は綾操にくきものゆえ、今晩の中に引裂くという事は、御尊父様のお名を匿したのかと心得ます、渡邊織江の織というところの縁によって、斯様な事を認いたのでも有りましょうか、此の花と申すは拙者を差した事で、今を春辺と咲くや此の花、という古歌に引掛けて、梅三郎の名を匿したので、拙者の文を其処へ取落して置けば、春部に罪を負わして後は、若江に心を懸ける者がお屋敷内にあると見えます、それを青茎の蕾の儘貴殿の許へ送るというのは若江を取持いたす約束をいたした事か、好文木とは若殿様を指した言葉ではないかと存じますと申すは、お下屋敷を梅の御殿と申しますからの事で、梅の異名を好文木と申せば、若殿紋之丞様の事ではないかと存じます、お秋の方のお腹の菊之助様をお世嗣に仕ようと申す計策ではないかと存ずる、其の際此の密書を中ば引裂いて逃げましたところの松蔭大藏の下人有助と申す者が、此の密書を奪られてはと先頃按摩に姿を窶し、当家へ入込み、一夜拙者の寝室へ忍び込み、此の密書を盗まんと致しましたところを取押えて棒縛りになし翌朝取調ぶる所存にて、物置へ打込んで置きましたら、いつか縄脱けをして逃去りましたから、確と調べようもござらんが、常磐というのは全く松蔭の匿名で大藏の家来有助が頼まれて尾久在へ持ってまいるとまでは調べました、またそれに千早殿と認めてあるのは、頓と分りませんが、多分神原の事ではござらんかと拙者考えます、お屋敷の内に斯様な悪人があって御舎弟紋之丞様を亡い、妾腹の菊之助様を世に出そうという企みと知っては棄置かれん事、是は拙者の考えで容易に他人に話すべき事ではござらんが、御再考下さるよう……拙者は決して逃隠れはいたしませんが、お互に年来御高恩を蒙った主家の大事、証拠にもならんような事なれども、お国家老へ是からまいって相談をして見とう存じます、是は貴方一人でも拙者一人でもならんから、両人でまいり、御城代へお話をして御意見を伺おうと存じますが如何でござる」


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