三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「誰だ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「誰だよ?」
「お久しぶりです……えっと、昇進おめでとうございます」
「誰だっけ?」
「屋敷の松蔭大蔵さんに仕えてた、助という中間です」
「あー、あんま話したことなかったっけ?一回か二回会ったかもな。忘れちゃった。で、どうしたの?」
「そっちも知ってると思うんですけど、去年の9月にちょっとやらかしてしまって、家から追い出されちゃって。謝っても許してくれなくて、田舎の友達を頼ったんですが、運悪くその友達が牢屋に入ってしまって。留守番しながら面倒見てたんですけど、借金もあってだんだん厳しくなっちゃって、居候も無理だって言われて出てきちゃったんです。他に頼れる身内もいないんで、やっぱり謝って戻ろうかと思ったんですけど、主人は頑固ですからね。いろいろ考えたんですけど、確かそっちは美作出身ですよね?」
「そうだよ」
「だからそっちに謝ってもらおうと思って、旅から相談に来たんですけど、門から入れないんで、田んぼの中をずぶずぶと入って忍び込んできたんです。でも腹が減りすぎて倒れちゃって、雪や雨に当たったせいか腹痛になって、思わず唸っちゃいました。恐縮ですが、ぜひ主人に謝ってもらえませんか?」
「うーわ、よっぽどやらかしたんだな。許さないだろうな。困ったな。何か食ってないの?」
「はい、昨日のお昼から食べてません」
「よし、許すかどうかはわかんないけど、話くらいはしてみよう。ご飯も食べさせよう」
「ありがとうございます」
「屋敷に無断で忍び込んだり、唸いたりしないでよ。門から入れよ……こんなに泥だらけじゃ話にならないから小屋に来い」
「ありがとうございます」
「おいで」
「あの、腹痛で腰が痛くて歩けないんです」
「困った奴だな。何とか歩けよ。この棒を杖にしなさい」
「ありがとうございます」
「しっかり持てよ」
「はい」
「提灯を持て」
「はい」

原文 (会話文抽出)

「誰だ」
「誠に暫く、御機嫌宜しゅう……だん/″\御出世でお目出度うござえます」
「誰だ」
「えゝ、お下屋敷の松蔭大藏様の所に奉公して居りました、有助と申す中間でござえます」
「ウン然うか、碌に会った事もない、それとも一度か二度会った事があるかも知れんが、忘れた、それにしても何うしたんだ」
「へえ、あなたは委しい事を御存じありますめえが、去年の九月少し不首尾な事がありまして、家へは置かねえとって追出され、中々詫言をしても肯かねえと存じまして、友達を頼って田舎へめえりましたところが、間の悪い時にはいけねえもんで、其の友達が災難で牢へ行くことになり、留守居をしながら家内を種々世話をしてやりましたが、借金もある家ですから漸々行立たなくなって、居候どころじゃアごぜえませんから、出てくれろと云われるのは道理と思って出ましたが、他に親類身寄もありませんから、詫言をして帰りてえと思いましても、主人は彼の気象だから、詫びたところが置く気遣いは有りません、種々考えましたが、あなたは確か美作のお国からのお馴染でいらっしゃいますな」
「然うよ」
「あなたに詫言をして戴こうと斯う思いやして、旅から考えて参りましたところが、中々入れませんで、此の田の中をずぶ/\入って此処へ這込みやしたが、久しく喰わずにいたんで腹が空いて堪りません、雪に当ったり雨に遭ったりしたのが打って出て、疝癪が起って、つい呻りました、何分にも恐入りますが何うか主人に詫言をお願い申します」
「むう、余程悪い事をしたな、免すめえ、困ったなア、なに物を喰わねえ」
「へえ、実は昨日の正午から喰いません」
「じゃア、ま肯くか肯かねえか分らんけれど、話しても見ようし、お飯は喰わしてやろう」
「有難うござえます」
「屋敷へつか/\無沙汰に入って呻ったりしないで、門から入れば宜いに……何しろ然う泥だらけじゃア仕方がねえから小屋へ来い」
「有難うごぜえます」
「さ行け」
「貴方ね、疝癪で腰が攣って歩けません」
「困った奴だ、何うかして歩け、此の棒を杖け」
「へえ、有難うごぜえます」
「それ確かりしろ」
「へえ」
「提灯を持て」
「へえ」


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