三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「これ若、もう物を云わずさっさと出て往け」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「おい若、もうぐだぐだ言わずにさっさと出て行け」
「あなた様には初めてお目にかかりますが、こんな汚いところにこんな立派な侍さんがいらっしゃったんだから、どうかこの娘を可愛がってください。せっかくここまで連れて逃げてきたのに、若いんだからよくあることではあるでしょうが、田舎者だからと言って、頑固な婆あさんで、どう弁解してみてもダメで、あなた様にはおわかりにならないでしょうけど、今お話しした通り事情があって、どうしてもこの娘を家に置くことができません。今すぐに追い出します。名主にも届け出て、親子を縁切って勘当します。行き先もなければ親戚も頼れない奴ですから、見捨てないで女房にしてください。あなたがたが見捨てても私は恨みません。どうかお願いします。なんだ清蔵?あの若者を屋敷奉公させて家に帰れば、柔らかものの着物が着られないだろうと思って、紬や縞の手織りがとてもよくできている。あんなものが家に残っていると後で見て嫌な気持ちになるからいらない。帯とか櫛とかかんざしとかも全部いらないから、お前を一風呂敷にまとめて表に捨てろ」
「捨てなくてもいいんじゃない?腹は立つけど捨てたってしょうがないよ」
「おい、わかんねえ奴だな。石原の親たちに対してはこの娘には何も着せられない。かといって家に置けば嫌な気持ちになる。憎らしい不孝な娘の着物を目にするのは嫌だから、捨てろって言ってるんだ」
「捨てずに取っておけばいいじゃない?」
「雨が降りそうだから、合羽とか傘とか下駄とか何でも好きなものを付けてやれ。この娘にはやれないよ。憎いから。でも家に置くことができないから捨てるんだ。雨が降りそうだから」
「うーむ、なるほどね。捨てるよ。箪笥ごと捨ててもいいよ。全部捨てるから、誰かが拾っていけばいい。ああっ、義理ってのは本当に始末の悪いものだ」
「ちょっと待って……清蔵どん、ちょっと待ってくれ。さっき親父が言ったことはとてもごもっともだと思います。あなたの父親が生きていた時から婚約していた夫がいることを知らずに、無理に私が若江さんを連れてきたのは、あなたに対して本当に申し訳ありません。若江さんは亡くなった父親の命令に背いて、不孝の上に不孝を重ねてしまいました。私はどこへも行くとこともありませんが、男一人でいれば、どんな山の中だって食べ物は手に入ります。あなたはここに残って婿をもらって、家名を継いでください。私は一人で行きます」
「ちょっと待って……そんなに義理立てしてむやみに出かけていったってダメだよ。二人で出てきたものが、一人置いてあなたが行くなんて娘も嫌な思いをするよ。よく相談して行こう。さっき草鞋代をくれるって言ってたんだから待ちなさいよ。おい、ぐずぐず言うからわからないだろう?はっきり言えよ、泣くのはやめて……彼の人だけ追い返してしまえば義理が済むわけじゃない。恋愛だって親にも義理があるんだから、追い返すくらいなら首をくくるか、身を投げ出して死ぬって言うんだよ」
「うるさいなあ……死ぬなんて脅すようなことを言ったら、母親は魂が抜けちゃうと思って、死ぬなんていうな。死ぬって言ったところで今まで死んだ例はないよ。さあ、今すぐ死ね。私には義理さえ立てればそれでいいよ。お前以外の子供はいないけど、死ぬなんて逆らったら、死ぬんなら死ねばいい。ほら、ここに包丁があるから」
「やめてよ、困ったなあ……おう、どうした」

原文 (会話文抽出)

「これ若、もう物を云わずさっさと出て往け」
「お前様には始めてお目にかゝりましたが、お立派なお侍さんが斯んな汚え処へお出でなすったくれえだから、どうか此の娘を可愛がって下せえまし、折角此処まで連れて逃げて来たものを、若い内には有りうちの事だ、田舎気質とは云いながら、頑固な婆アだ、何の勘弁したって宜えにとお前様には思うか知んねえけれども、只今申します通り義理があって、どうも此の娘を宅へ置かれません只た今追出します、名主へも届け、九離断って勘当します、往処もなし、親戚頼りもねえ奴でごぜえますから、見棄てずに女房にして下せえまし、貴方が見棄てゝも私ゃア恨みとも思いませんが、どうかお頼み申します、何や清藏、あのお若を屋敷奉公させて家へ帰らば、柔けえ物も着られめえと思って、紬縞の手織がえらく出来ている、あんな物が家に残ってると後で見て肝が焦れて快くねえから、帯も櫛笄のようなものまで悉皆要らねえから汝え一風呂敷に引纒めて、表へ打棄っちまえ」
「打棄らねえでも宜かんべい、のう腹ア立とうけれども打棄ったって仕様がねえ」
「チョッ、分らねえ奴だな、石原の親達へ対しても此娘がに何一つ着せる事ア出来ねえ、そんならと云って家に置けば快くねえ、憎い親不孝なア娘の着物を見るのは忌だから、打棄ちまえと云うだ」
「打棄らずに取って置いたら宜かんべい」
「雨も降りそうになって居るから、合羽に傘に下駄でも何でも、汝が心で附けて、此娘がに遣ることは出来ねえ、憎くって、併し家に置くことが出来ねえから打棄れというのだ、雨が降りそうになって居るから」
「うーむ然うか、打棄るべえ、箪笥ごと打棄っても宜い、どっちり打棄るだから、誰でも拾って往くが宜い、はアーどうも義理という二字は仕様のねえものだ」
「ま暫く……清藏どんとやら暫くお待ち下さい、只今親御の仰せられるところ、重々御尤もの次第で、御尊父御存生の時分からお約束の許嫁の亭主あることを存ぜず、無理に拙者が若江を連れてまいりましたは、あなたに対しては何とも相済みません、若江は亡られた親御の恩命に背き、不孝の上の不孝の上塗をせんければならず、拙者は何処へも往き所はないが、男一人の身の上だから、何処の山の中へまいりましても喰うだけの事は出来ます、お前は此処に止まって聟を取り、家名相続をせんければならんから、拙者一人で往きます」
「ま、お待ちなせえ……そんな義理立えして無闇に往ったっていけねえ、二人で出て来たものが、一人置いてお前さんが往ったら娘も快くねえ訳だア、宜く相談して往くが宜い、今草鞋銭をくれると云うから待てよ、えゝぐず/\云っちゃア分らねえ、判然云えよ、泣きながらでなく……彼の人ばかり追返しちゃア義理が済むめえ、色事だって親の方にも義理があるから追返す位なら首でも縊るか、身い投げておっ死ぬというだ」
「篦棒……死ぬなんて威し言を云ったら、母親が魂消て置くべいかと思って、死ぬなんてえだ、死ぬと云った奴に是迄死んだ例はねえ、さ只た今死ね、己は義理さえ立てば宜い、汝より他に子はねえが、死ぬなんて逆らやアがって、死ぬなら死ね、さ此処に庖丁があるから」
「止せよー、困ったなア……うむ何うした/\」


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