三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「えゝもし……其処においでのお方」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「おい……そこのお方」
「あ、びっくりした。うへぇ、魂が抜けちゃった。あ、怖ぇな……何かぽこっと黒いものがあったから。ここはよくタヌキが出る場所なんだ」
「あら、気持ち悪い。怖いこと……」
「まだ誰かいるのかな……」
「いえ、心配ない者です。私は旅人ですが、足が弱くて困っているので、駕籠を借りたいと思っているのですが、このあたりに駕籠がありますか?それに鴻の巣まではまだどれくらいあるでしょうか?それにあなたは近所の方ですか、それとも旅人ですか?」
「私は鴻の巣まで帰る者ですが、駕籠を借りて戻っても、十四、五町は歩かなきゃなりませんよ。あともう少し行けば鴻の巣です。五、六町くらいのところだから、同伴が一人増えれば、まあ少しは紛れますよ。私も怖いんですが、年を取って臆病なので、強盗が出てきたり、タヌキが出てきたらどうしようかと考えていたんです。だから本当に魂が飛びましたね、飛び上がりました。今でもまだドキドキしています……あなたが大小を差しているから侍さんに見えますが、どうか一緒に連れて歩いてください。私も鴻の巣まで行く者です」
「それは幸運なことだ。それじゃぜひご一緒させてください」
「え……ここでご飯を食べるわけにはいきませんよね。ご飯を食べましょう」
「いえ、ご一緒したいんです」
「ははは、一緒に行くってことですか?じゃ、ご一緒しましょう……疲れて歩けないのはこのお姉さんですか?それは困りましたね。江戸っ子というのは歩くことに慣れてないから旅に出ると弱虫になりますね。私も旅籠にいますが、時々お客さんが足を肉刺で踏んで、吹売が糊付け板を持ってきて、いつも糊付け板を持っていくんですが。足の皮が柔らかいから。ちょっと待ってくださいね。私一人だと怖いので、提灯をつけずにこうやって下げていました。同伴が増えたからつけましょう」
「提灯は私が持ちましょう」
「私はここにふところ付木を持っています。江戸見物に行った時に山店で買ったんですが、赤い長太郎玉が一緒に買ったんですけど、付木ってのは紙切りですよ。火口があるから簡単です。松の木陰に入らないでくださいね。風が吹いてくるから」
「これはなかなか点かないもんですね。燧が丸くなってしまって、それに火口が湿ってるんですから……やっと点きました。これでこの紙の付木につけます。これならよく点きますよ。硫黄臭いですが、硫黄で作った紙なんでしょうね。南風でも北風でも消えないって自慢して売ってましたよ。点けてしまえば、手で押さえておけば何日でも使えます」
「じゃ私が持ちましょう。提灯は本当に幸いですね。さあ、我慢してください。五町くらいだって言うから」
「はい、ありがとうございます」
「疲れたでしょ?へへへへ、顔をそっちに向けなくてもいいですよ」

原文 (会話文抽出)

「えゝもし……其処においでのお方」
「はっ……あー恟りした、はあーえら魂消やした、あゝ怖かねえ……何かぽく/\黒え物が居ると思ったが、こけえらは能く貉の出る処だから」
「あれまア、忌な、怖いこと……」
「まだ誰か居るかの……」
「いえ決して心配な者ではありません、拙者は旅の者でござるが、足弱連で難儀致して居るので、駕籠を雇いたいと存ずるが、此の辺に駕籠はありますまいか、然うして鴻の巣まではまだ何の位ありましょう、それに其方は御近辺のお方か、但し御道中のお人か」
「私は鴻の巣まで帰るものでござえますが、駕籠を雇って後へ帰っても、十四五丁入らねえばなんねえが、最う少し往けば鴻の巣だ、五丁半べえの処だアから、同伴でも殖えて、まアね少しは紛れるだ、私も怖ねえと思って、年い老ってるが臆病でありやすから、追剥でも出るか、狸でも出たら何うしべえかと考え/\来たから、実に魂消たね、飛上ったね、いまだにどう/\胸が鳴ってるだ……見れば大小を差しているようだ、お侍さんだな、どうか一緒に連れて歩いてくだせえ、私も鴻の巣まで参るもので」
「それは幸いな事で、然らば御同伴を願いたい」
「えゝ…こゝで飯ア喰う訳にはまいりやせん、お飯を喰えって」
「いえ、御同道をしたいので」
「アハヽヽヽ一緒に行くという事か、じゃア、御一緒にめえりますべえ……草臥れて歩けねえというのは此の姉さんかね、それは困ったんべえ、江戸者ちゅう者は歩きつけねえから旅へ出ると意気地はねえ、私も宿屋にいますが、時々客人が肉刺エ踏出して、吹売に糊付板を持って来うてえから、毎でも糊板を持って行くだが、足の皮がやっこいだからね、お待ちなせえ、私ア独り歩くと怖えから、提灯を点けねえで此の通り吊さげているだ。同伴が殖えたから点けやすべえ」
「お提灯は拙者が持ちましょう」
「私ア此処に懐中附木を持ってる、江戸見物に行った時に山下で買ったゞが、赤い長太郎玉が彼と一緒に買っただが、附木だって紙っ切だよ、火絮があるから造作もねえ、松の蔭へ入らねえじゃア風がえら来るから」
「これは中々点かねえもんだね、燧が丸くなってしまって、それに火絮が湿ってるだから……漸の事で点いただ、これでこの紙の附木に付けるだ、それ能く点くべい、えら硫黄臭いが、硫黄で拵えた紙だと見える、南風でも北風でも消えねえって自慢して売るだ、点けてしまったあとは、手で押えて置けば何日でも御重宝だって」
「じゃア拙者が持ちましょう、誠にお提灯は幸いの事で、さ我慢して、五町ばかりだと云うから」
「はい、有難う存じます」
「お草臥れかね、えへゝゝゝゝ顔を其方へ向けねえでも宜い」


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