三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「えゝい、人間は何処で何う運が来るか分らね…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「えー、人間ってどこでどうやって運が来るか分かんねえもんだな。畜生、どっか行け。俺が腰を下ろしてるからくっついてきやがる。そこのけ、そこのけ。あはははは。尻尾振ってきやがる」
「おう林蔵、どこ行ってたんだ?旦那と一緒にだったのか?」
「おう」
「へえー、そうか。じゃ、一杯飲んでったのか」
「おう」
「へえー、じゃ、じゃあな」
「あはははは。田舎者の言うことはさっぱりわからんもんだな。おーい、お菊さん、今帰ったよ」
「あら、もう帰ったの?遅かったから心配したんだけど。旦那様は?」
「旦那様は神原さんの小屋で飲み会が始まったから、俺は先に帰れって言われたから、俺だけ戻ってきた」
「ご苦労様」
「おう。この折りの中のごちそうは旦那様が俺にやるんだって。お菊もいつも頑張ってるから、お菊と二人でちゃぶ台で一杯飲めよって言って、このごちそうをくれたんだ。それで、ここに旦那様がいつも飲んでるお酒をもらえないかなって」
「神原さんの小屋で飲み会が始まったら、また帰ってくるの遅くなりそうね」
「おう、きっと丑の刻か子の刻になると思うよ。だからこういうわけなんだ」
「その折のごちそうはあげるから、部屋に持って帰って、お酒もほどほどに出してゆっくり食べて」
「ヒエー……それがそうじゃなくて」
「どうしたの?」
「旦那様が言うには、俺はちゃぶ台で酒を飲んだことはないだろう。料理茶屋で飲ませるのは当たり前だけど、ちゃぶ台で飲ませるのは特別なおもてなしだって。へえ、ありがたいことですって、こう礼を言ったみたいで」
「旦那様がそう言っても、お前がそれを真に受けてちゃぶ台でお酒飲むのはダメだよ。私から悪いことは言わないから部屋で飲んでよ」
「そうなんですか?ねえ、ここで飲まないともったいないですよ。旦那様の気持ちを無にするみたいじゃない?この戸棚になんかあるんじゃないですか?膳とか徳利とか……」
「ダメよ。お前、そんなもの出したら」

原文 (会話文抽出)

「えゝい、人間は何処で何う運が来るか分らねえもんだな、畜生彼方へ往け、己が折を下げてるもんだから跡を尾いて来やアがる、もこ彼方へ往け、もこ/\あはゝゝゝ尻尾を振って来やアがる」
「いや林藏何処へ往く、なに旦那と一緒に、然うかえ、一盃飲ったなア」
「然うよ」
「それははや、左様なら」
「あはゝゝゝ何だか田舎漢のいう事は些とも解らねえものだなア、えゝお菊さん只今帰りました」
「おや、お帰りかえ、大層お遅いからお案じ申したが、旦那さまは」
「旦那さまは神原様のお小屋で御酒が始まって、手前は先へ帰れと云いましたから、私だけ帰ってめえりました」
「大きに御苦労よ」
「えゝ、此のお折の中のお肴は旦那様が手前に遣る、菊も不断骨を折ってるから、菊と二人で茶の間で一盃飲めよと云うて、此のお肴を下せえました、どうか此処で旦那さまが毎も召上る御酒を戴きてえもんで」
「神原さまのお小屋で御酒が始まったら、またお帰りは遅かろうねえ」
「えゝ、どうもそれは子刻になりますか丑刻になりますか、様子が分らねえと斯ういう訳で、へえ」
「其の折のお肴はお前に上げるから、部屋へ持て往って、お酒も適い程出して緩くりおたべ」
「ヒエ……それが然うでねえ訳なので」
「何をえ」
「旦那さまの云うにア、手前は茶の間で酒を飲んだ事はあるめえ、料理茶屋で飲ませるのは当然の話だが、茶の間で飲ませろのは別段の馳走じゃ、へえ有難い事でござえますと、斯う礼を云ったような理由で」
「如何に旦那さまが然う仰しゃっても、お前がそれを真に受けて、お茶の間でお酒を戴いては悪いよ、私は悪いことは云わないからお部屋でお飲べよ」
「然うでござえますか、お前さん此処で飲まねえと折角の旦那のお心を無にするようなものだ、此の戸棚に何か有りやしょう、お膳や徳利も……」
「お前、そんな物を出してはいけないよ」


青空文庫現代語化 Home リスト