GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』
現代語化
「はい。ではここを閉めましょうか?」
「いや、それはいい。あの、忙しいところをお引き留めして、大変申し訳ございません」
「まあまあ、どうしたんだ? 私に聞きたいことは?」
「はい。別に重要なお話ではありませんが、お屋敷のしきたりについてお伺いしたいことがありまして。というのも、私はしきたりについて何も分からず、不慣れなままにこのような役職を仰せつかっているものですから、身に余る光栄だと思いつつも、欲には際限がなく、何とか身体が続く限り奉公に励もうと思ってはいますが、上役の方のお引き立てがなければ、新入りなど出世できるものではありません。渡辺殿は特別に贔屓にしてくださいますが、あなた方の伯父上の秋月様からは、まだお話を伺ったこともありません。大蔵は必死に頑張っていますが、手蔓がなく、仕方なく今日まで何もしていませんでしたが、春部様から声をかけていただき、秋月様にお目通りして、上司からよくおとりなしいただければ、私も欲張りすぎているわけではなく、先祖に対して何よりの孝行になると思っています。どうか伯父上に対し、あなた様からよく取り上げていただけますようお願いたします」
「いや、それは無理な話だ。よく考えてみろ。お前は何か武芸に優れているとか、学問に長けているとか、あるいは人柄や対応が立派だとか、さすがに侍の血筋だけあってさすがだという家中の評判も上々だが、何か功績がなければ出世はできない。その功績というのは、他の人より優れているとか、あるいは屋敷に賊でも侵入したときに取り押さえたとか、何かそういうものでなければ、たとえ伯父と甥の関係でも、伯父に頼んで無理やり「ああしろ」「こうしてくれ」と言ったのではひいき目になるだけだから、それでは伯父も納得いかないだろう。そういうことで私をここに呼び寄せて、お前からご馳走になって引き立ててくれと頼んで、酒なんか飲ませてくれるのは本当に困る。こういうことが伯父に知れたら叱られるから、ご勘弁ください…」
「少しお待ちください…私の出世だけでなく、こうして申し上げる大蔵も、お屋敷に対していくらか功績があるのです。だから、強くお願いしているのです」
「功績があるならいいだろう。どんな功績だ?」
「愚か者なので何事も分かりませんが、お屋敷のしきたりというのはどういうものですか?罪の軽重が分かりませんが、まず家中に罪を犯した者がいるときに、重い罪を軽く図ったほうがいいのですか?それとも、罪は罪なので、その悪事に見合った罪に罰するのがいいのですか?私、心得のために知っておきたくて」
「それは罪を犯した者の状況にもよるだろうが、上たる者は下の者の罪はできるだけ軽くして、命を助けなければならん」
「それはそうでしょうが、もしあなたの家来があなたに対して不忠なことをして、手討ちにすべき奴を手討ちにするべきではない場合、手討ちにしたほうがいいのですか?それとも、お助けになって門前払いにして、永のお暇を出したほうがいいのですか?」
「そんなことは言うまでもない。斬るほどの罪を犯し、斬るべきところを助けて、永の暇と言って少しばかりの手当をして暇を出す。これが主従の情ってもので、言葉では言い尽くせないところがあるのだ」
原文 (会話文抽出)
「女中今少しお話し申す事があるから、誰も此処へ参らんようにしてくれ、用があれば手を拍って呼ぶから」
「はい、左様なれば此処を閉めましょうか」
「いや、それは宜しい……えゝお急ぎの処をお引留め申して何とも恐入りました」
「あい何だえ、私に聞きたい事というのは」
「えゝ、外でもござりませんが、お屋敷の御家風に就て伺いたい儀がござる、それと申すも拙者は何事も御家風を心得ません不慣の身の上にて、斯様な役向を仰付けられ、身に余りて辱けない事と存じながら、慾には限りのないもので、何の様にも拙者身体の続くだけは御奉公致します了簡なれども、上役のお引立が無ければ迚も新参者などは出世が出来ません、渡邊殿は別段御贔屓を下さいますが、貴方の伯父御さまの秋月さまは未だ染々お言葉を戴きました事もないゆえ、大藏疾より心懸けて居りますが、手蔓はなし、拠なく今日迄打過ぎましたが、春部様からお声がゝりを願い、秋月様へお目通りを願いまして、お上へ宜しくお執成を願いますれば拙者も慾ばかりではござらん、先祖へ対して此の上ない孝道かと存じますで、どうぞ伯父上へ貴方様から宜しく御推挙を願いたい」
「いや、それはお前無理だ、よく考えて見なさいお前は何か腕前が善いとか文道にも達して居るとか、又品格といい応対といい、立派な侍の胤だけあって流石だと家中の評も宜しいが、何ぞ功がなければ出世は出来ん、其の功と云うは他に勝れた事があるとか、或は屋敷に狼藉でも忍入った時に取押えたとか何かなければ迚もいかんが、如何に伯父甥の間柄でも、伯父に頼んで無理にあゝしてくれ、斯うしてくれと云っては依怙の沙汰になって、それでは伯父も済まん訳だから、然ういう事で私を此処へ呼び寄せて、お前が馳走をして引立を願うと云って、酒などを飲ましてくれちゃ誠に困る、斯様な事が伯父に知れると叱られますから御免……」
「暫くお待ちを……此の身の出世ばかりでなく、斯く申す大藏も聊かお屋敷へ対して功がござる、それゆえ強いて願いますわけで」
「功が有れば宜しい、何ういう功だ」
「愚昧の者にて何事も分りませんが、お屋敷の御家風は何ういう事でござろうか、罪の軽重を心得ませんが、先ず御家中内に罪あるものがござります時に、重き罪を軽く計らう方が宜しいか、罪は罪だから其の悪事だけの罪に罰するが宜しいか、私心得のために承知をして置きとうござる」
「それは罪を犯したる者の次第にも因りましょうけれども、上たる者は下の者の罪は減じ得られるだけ軽くして、命を助けんければならん」
「それは然うあるべき事で、若し貴方の御家来が貴方に対して不忠な事を致しまして、手討に致すべき奴を手討にせんければならん時、手討に致した方が宜しいか、但しお助けなすって門前払いにいたし、永のお暇を出された方がお宜しいか」
「其様な事は云わんでも知れて居る、斬る程の罪を犯し、斬るべきところを助け、永の暇と云って聊か手当をいたして暇を遣わす、是が主従の情というもので、云うに云われん処が有るのじゃ」