三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「これ怪しからん奴だ、やい下ろ、二階へ上る…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「これは怪しからん奴だ。おい、降ろせ。2階に上がる奴を降ろせ」
「あ、痛いよ…」
「無礼千万な奴だ。人が酒を飲んでいるところに、草履を投げ込むとは何事だ?」
「あ、痛い…本当に申し訳ありません。懐から落ちただけですから、許してください」
「この階には下足番がいるんだぞ。みんな下足を預けてから上がるのに、懐に入れて上がる奴があるか。この中には何かお前に恨みがあるに違いない」
「いや、恨みも何もありません。あなたとは初めてお目にかかりますし、恨みがあるはずがありません。私は何も知らない田舎者で、年を取っていますし、ご馳走の酒をいただいて酔っ払ったので、体が横になった時に懐から草履が落ちたんです。どうか勘弁してください」
「勘弁も何もない。よく考えろ。人の汁物にこうやって草履を投げ込んで、泥だらけにして、これをどうして食べるんだ?」
「確かにその通りですが…でも草履とおっしゃいますが、米でも麦でも、大抵のものって土からできていませんか?肥料を使わないものなんてありませんよね?あ、痛い。また殴ったね」
「肥料を使わないものはないかもしれないが、直接肥料を食べ物にかけて食べる奴があるか?怪しからん。理由が分からない奴だな」
「あの、そんな奴に何を言っても、痛いもかゆいも分からないと思います。家来の不調法は主人の失態ですから、主人さんがここに来て謝罪すれば勘弁してやる。それまではこの荷物を預かっておけ。なに、娘を連れて年を取っている奴だと?あの、さっきも言った通り、家来の不調法は主人の不調法だから、主人さんがここに来て、お前に代わって謝罪すれば勘弁してやってもいいが、それまでは荷物を預かる。そもそも家来の不調法を主人が謝るなんてことはあり得ない」
「謝ることはなくても、私が不調法をして、旦那様を謝らせたら申し訳ありません。それに荷物を預かられたら旦那様に申訳ないので、どうかこのままにしておいてください。私が不調法をしたんだから、いくら殴られても黙って耐えます。人間の頭には神様がいますよ。そこを殴っちゃいけません」
「なに…」
「あ、痛い。また殴った」
「何を言ってる?そんな屁理屈ばかり言っても仕方がない。もっと分かる奴を出せ」
「あ、痛い…ですから、もう一回だけ勘弁してくださいよ」
「勘弁も何もない」
「勘弁してくれないと、この荷物が大変なことになりますよ」
「お前が不調法をして荷物が大変になるのは当然だ。お前が出入り禁止になったところで、私が知るわけないだろ。さあ、出せ」
「あ…あれ…取られた。この荷物を取られたら私の人生が終わります。この慈悲知らずの野郎」
「なに野郎だ…」
「せめて女中さんを送ってくださいよ」
「そういう時はやっぱり女のがいいよ」
「そんなこと言わずに行ってくださいよ」
「客が性質悪いみたいだ。何かごたごたしようとしてるみたいだから、仕方ないだね」
「ねえ、皆さん」
「なんだ?お前は何だ?」
「あなた、お供さん、気をつけないとダメですよ。あなたって、この方々は下足番がいるのを知らないでしょう?靴を懐に入れて階段を上がろうとして、酔っぱらっていたから不調法に落としたんでしょう。本当に気の毒ですよ。せめてこのお花見の時期でお客さんも多いですから、機嫌を直してくださいよ。何ですか。ちょっとあなた?」
「なんだ、無礼千万な奴。愛嬌があるとか器量がよいとか言うならまだしも、自分の顔を見ろ。お前には分からないだろうから、分かる人間を出せ」
「本当にもう、あの、清次どんちょっと」
「ほら、こっちに来た」
「取っても付かないよ。変な奴だよ」
「女でもいいんだけど、仕方ないね」
「えへへ」
「変な奴が出てきたな。お前は何者だ?」
「今日は生憎、主人が下町まで行っていていませんが、私は帳場にしている番頭です。ご立腹なところ誠に申し訳ございませんが、ともかくあの、そもそもあなたが逆らったのが悪いんです。こちらにご立腹なさるのは当然であって、謝罪なさってください。えへ…この人は何も知らないそうで申し訳ありませんが…」
「申し訳ないってだけでどうしろと言うんだ?」
「どうか旦那様」
「うん、なんだ?何がどうした?この椀をどうしろって言うんだ?勘弁しろって言ったって、泥だらけになったものを食べれるかい?」
「その場合、旦那様。こうしましょう。料理を交換しましょう。お芳どん、これを持って行って。何か上等な、さっぱりしたお刺身とか」
「嫌な奴だな、にやにやして」
「料理をすべて交換して、燗の効いたお酒をお出しして、機嫌を直して帰っていただきたいと思います」
「これは私の不調法から起きたことなので、代金はいただきません。皆様にご馳走するつもりで」
「黙れ。無礼千万なことを言うな。ご馳走なんて、お前におごってもらいたくて立腹していると思うのか?おごってもらいたくて怒っているわけじゃないぞ」
「いや、最初はそうしておいて、あとで代金をいただくんです」
「お前では分からない。もっと分かる人を寄越せ」

原文 (会話文抽出)

「これ怪しからん奴だ、やい下ろ、二階へ上る奴下ろ」
「あ痛いやい……」
「不礼至極な奴だ、人が酒を飲んでいる所へ、屎草履を投込むとは何の事だ」
「あ痛い……誠に済みませんが、懐から落ちたゞから御勘弁を願えます」
「これ彼処に下足を預る番人があって、銘々下足を預けて上るのに、懐へ入れて上る奴があるものか、是には何か此の方に意趣遺恨があるに相違ない」
「いえ意趣も遺恨もある訳じゃねえ、お前様には始めてお目に懸って意趣遺恨のある理由がござえません、私は何にも知んねえ田舎漢で、年も取ってるし、御馳走の酒を戴き、酔払いになったもんだから、身体が横になる機みに懐から雪踏が落ちただから、どうか御勘弁を」
「勘弁罷りならん、能く考えて見ろ、人の吸物の中へ斯様に屎草履を投込んで、泥だらけにして、これを何うして喰うのだ」
「誠に御道理……併し屎草履と仰しゃるが、米でも麦でも大概土から出来ねえものはねえ、それには肥料いしねえものは有りますめえ、あ痛い、又打ったね」
「なに肥料をしないものはないが、直接に肥料を喰物に打かけて喰う奴があるか、怪しからん理由の分らん奴じゃアないか」
「これ/\其様な者に何を云ったって、痛いも痒いも分るものじゃアない、家来の不調法は主人の粗相だから、主人が此処へ来て詫るならば勘弁して遣ろう、それまで其の小包を此方へ取上げて置け、なに娘を連れて年を老っている奴だと、それ/\今も云う通り家来の不調法は主人の不調法だから、主人が此処へ来て、手前に成り代って詫るなれば勘弁を仕まいものでもないが、それ迄包を此方へ預かる、一体家来の不調法を主人が詫んという事は無い」
「詫ん事は無いたって、私が不調法をして、旦那様を詫に出しては済みません、それに包を取上げられてしまっては旦那様に申訳がないから、どうか堪忍しておくんなせえましな、私が不調法を為たんだから、二つも三つも打叩かれても黙って居やすんだ、人間の頭には神様が附いて居ますぞ、其処を叩くてえ事はねえ」
「なに……」
「あ痛い、又打ったな」
「なにを云う、其様な小理窟ばかり云っても仕様がねえ、もっと分る奴を出せ」
「あ痛い……だからま一つ堪忍しておくんなせえましよ」
「勘弁罷りならん」
「勘弁ならんて、此の包を取られゝば私がしくじるだ」
「手前が不調法をしてしくじるのは当然だ、手前が門前払いになったて己の知った事かえ、さ此方へ出さんか」
「あ……あれ……取っちまった、其の包を取られちゃア私が済まねえと云うに、あのまア慈悲知らずの野郎め」
「なに野郎だ……」
「鎌どんを遣っておくれな」
「なに斯ういう事は矢張り女が宜いよ」
「其様なことを云わずに往っておくれよ」
「客種が悪い筋だ、何かごたつこうとして居る機みだから、どうも仕様がない」
「ね、あなた方」
「何だ、何だ手前は」
「貴方申しお供さん、お気を附けなさらないといけませんよ、貴方ね、此方は下足番の有るのを御存じないものですから、履物を懐へ入れて梯子段を昇ろうとした処を、つい酔っていらっしゃるもんですから、不調法で落ちたのでしょう、実にお気の毒さま、何卒ね、ま斯ういうお花見時分で、お客さまが立込んで居りますから、御機嫌を直していらっしゃいよ、何ですよう、ちょいと貴方ア」
「なんだ不礼至極な奴め、愛敬が有るとか器量が好いとか云うならまだしも、手前の面を見ろい、手前じゃア分らんから分る人間を出せ」
「誠にどうも、あのちょいと清次どん」
「そら、己の方へ来た」
「取っても附けないよ、変な奴だよ」
「女でも宜いのに、仕様がないね」
「えへゝゝ」
「変な奴が出て来た、手前は何だ」
「今日は生憎主人が下町までまいって居りませんから、手前は帳場に坐っている番頭で、御立腹の処は重々御尤さまでございますが、何分にもへえ、全体お前さんが逆らっては悪い、此方で御立腹なさるのは御尤もで仕方がない謝まんなさい、えへ……誠に此の通り何も御存じないお方で相済みませんが…」
「只相済まん/\と云って何う致すのだ」
「どうか旦那さま」
「うん何だと、何が何うしたと、此椀を何う致すよ、只勘弁しろたって、泥ぽっけにした物が喰えるかい」
「左様なら旦那さま、斯様致しましょう、お料理を取換えましょう、ちょいとお芳どん、是をずっと下げて、何か乙な、ちょいとさっぱりとしたお刺身と云ったようなもので、えへゝゝ」
「忌な奴だな、空笑いをしやアがって」
「ずっとお料理を取換え、お燗の宜い処を召上り、お心持を直してお帰りを願います」
「是は手前の方の不調法から出来ました事でげすから、其のお代は戴きません、皆様へ御馳走の心得で」
「黙れ、不礼至極なことを云うな、御馳走なんて、汝に酒肴を振舞って貰いたいから立腹致したと心得て居るか、振舞って貰いたい下心で怒ってる次第じゃアなえぞ」
「いえその最初は上げて置いて、あとで代を戴きます」
「汝では分らんもっと分る者を遣せ」


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