三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「お互いに是は思い掛けない、縁と云うものは…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「お互いにこれは思いがけないね。縁というものは不思議なもんだ。私が国を出たのは去年の秋で、あなたも国にお帰りになっていないという噂は人づてに聞いていました」
「あなたもお元気そうで、何よりのご夫婦仲のようですね」
「まあね、お母さんも本当に安心したし、殿様も可愛がってくださって。扶持もそんなに要らないんだけど、親子3人食べる分だけあればいいのに、そんなこと言わずに貯めておきなさいって、いろんなものをくれるんですよ。もらわないと悪いから、仕方なくもらうんだけど、とにかく山盛りくれるんですよ。食べ物なんかは切溜を持ってきて、背負って帰らないとダメなんですよ。本当にありがたいことなんですけど、何でお返ししたらいいのか分からないから、旦那様を大事にして、寝ずに奉公するつもりなんです。あなたも今の若さで遊んでいるじゃなくて、どこかへ奉公したらどうですか?」
「私もそう思ってるんですよ。とても国に帰ってもいられないから、どこかへ奉公口を見つけようと思ってるんだけど、お屋敷の中で羽振りがいい人って誰ですか?」
「私はそんなこと知らないけど、国家老の福原数馬様、寺島兵庫様、お側御用の神原五郎治様あたりがいますよ」
「奴ってひどい言い方だね」
「それとこの間ちょっと聞いた話によると、お屋敷には智仁勇の3人の家来がいるらしいですよ。渡辺織江さんは慈悲深い人だからこれが仁で、秋月喜一郎かな、これはすごい剛の者で勇なんだって。えーと、何とか言ったっけ…戸村主水って人が賢いんだって。この人たちが羽振りがいいんだって。この人たちの言うことは殿様も聞くみたいで、家来に失敗があっても、渡辺さんや秋月さんがとりなすと殿様も許すそうですよ。秋月さんは槍奉行を勤めてるんだけど、なるほど強そうだよ。背が高くて」
「あなたの足の裏、どうしたの?穴が開いてるみたいだけど」
「これですか?これは殿様が槍を突きかけて、手で受けろとか何とか言うから、受けないわけにはいかなくて、手で受けたんですが」
「うーむ、そうか。そして家来の中で仁は渡辺織江、勇は秋月、智は戸村か。なるほど、こんな話は珍しいから書いておきましょう」

原文 (会話文抽出)

「お互いに是は思い掛けない、縁と云うものは妙だ、国を出たのは昨年の秋で、貴方も国にお在のないという事は人の噂で聞きました」
「お前も御無事で、殊に御夫婦仲も宜し、結構で」
「まアね、お母も誠に安心したし、殿様も贔屓にしてくれるだが、扶持も沢山は要らない、親子三人喰うだけ有れば宜いてえに、其様な事を云わずに取って置くが宜いって、種々な物をくれるだ、貰わねえと悪いと云うから、仕方なしに貰うけれども、何でも山盛り呉れるだ、喰物などは切溜を持ってって脊負って来ねえばなんねえだ、誠にはア有難え事になって、勿体ねえが、他に恩返しの仕様がねえから、旦那様を大切に思って、不寝に奉公する心得だが、貴方は今の若さで遊んでいずに、何処かへ奉公でもしたら宜かろう」
「拙者も然う思ってる、迚も国へ往ったっていけんから、何処ぞへ取付こうと思うが、御当家でお羽振の宜いお方は何というお方だね」
「私ア其様な事は知んねえ、お国家老の福原數馬様、寺島兵庫様、お側御用神原五郎治様とかいう奴があるよ」
「奴とは酷いね」
「それに此間ちょっくら聞いたが、御当家には智仁勇の三人の家来があるとよ、渡邊織江さんという方は慈悲深い人だから是が仁で、秋月喜一郎かな是はえら剛い人で勇よ、えゝ何とか云いッけ……戸村主水とかいう人は智慧があると云いやした、此者が羽振の宜い処だ、其の人らの云う事は殿様も聴くだ、御家来に失策が有っても、渡邊さんや秋月さんが取做すと殿様も赦すだ、秋月さんは槍奉行を勤めているが、成程剛そうだ、身丈が高くってよ」
「足下掌を何うした、穴が開いているようだが」
「これか、是は殿様が槍を突掛けて掌で受けるか何うだと云うから、受けなくってというので、掌で受けたゞ」
「むゝ、そうか、そして御家来の中仁は渡邊織江、勇は秋月、智は戸村、成程斯ういう事は珍らしいから書付けて往きましょう」


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