三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「手前は全く千代に惚れたか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「お前は本当に千代に惚れていたのか?」
「え、惚れてはいましたが、言うことを聞いてくれないので、可愛さ余って憎さが百倍になり、嫁に行く邪魔をしてやろうと思って、9月のお節句にお道具が出るでしょう。その時にお皿を打ち壊して指を切り、不具にして生涯亭主の持てないようになってやろうと、あなたの前ですが、そんなことを考えまして、皿検めの時に箱の蝶番が外れたってことで、糊でくっつけるふりをして、下のお皿を1枚割っておいたんです。そこでとりあえず恋の腹いせを晴らして嬉しいと思っていたら、この母様が飛んできて、私が病気で苦しいのを助けてくれようと思って危ない奉公と知りながら参ったんです。人参とかを飲ませてあげようと思って、親のために指を切られるのも覚悟で奉公に来たんですから、代わって私を殺してください。切ってくださいと、子を思うお母さんの心も、親を助けてあげようというお千代の孝行も、聞くほどに、ああ、なんて私は汚い根性だったんだろう。どうしてこんなに意地の悪い心になったんだろうと考えてしまいました。私がこれを考えなければ畜生と同じですよ。私は人間だから考えました。ああ、悪いことをしたと思いましたから、正直に打ち明けて旦那様に話して、私が千代の代わりに切られた方がいいと思います。それでここに参上しました。さあ、お切りください。首でもなんでもお切りください」
「妙な奴だなあ。お前がそれを壊したのか?」
「はい、私が壊しました」
「なるほど、長助。この者が壊したかもしれない。懺悔をして自分から切られようという以上は、そうしなければいけないだろう。しかし長らく奉公しているから、普段の様子もよく承知しているが、口もきかず、実に面白い奴だと思っていた。それに私に向かって時々生意気な口答えをすることもあって、正直者だと思って目を掛けていたが、他人の3倍も働き、力も5人分とか、身体相応の怪力を持っていて役に立つと思っていたのに、顔つきにも負けず劣らず千代に恋慕をするとは何事だ。うん、権六」
「はい、誠に面目次第もないことで、どうか私を……」
「権六さん、お前は私に恋慕を仕掛けたこともないのに、私を助けようと思ってそう言ってるのは嬉しいけれど、それじゃ私が済まない」
「ええい、そんなことを言っても、今日誠実を照らす世界に神様がいるんだから。まあ私の言うことを聞いてください」
「いや、お父さんは何を仰るか知りませんが、どうにもこの長助にはまだ腑に落ちないことがあります。権六、お前の言うようにお前が壊したという、確かな証拠がありますか?」
「え、証拠がありますから、その証拠をお見せしましょう」
「ふむ、見よう」
「はい、ただいま……」

原文 (会話文抽出)

「手前は全く千代に惚れたか」
「え、惚れましたが、云う事を肯かねえから可愛さ余って憎さが百倍、嫁に行く邪魔をして呉れようと、九月のお節句にはお道具が出るから、其の時皿を打毀して指を切り不具にして生涯亭主の持てねえようにして遣ろうと、貴方の前だが考えを起しまして、皿検めの時に箱の棧が剥れたてえから、糊でもって貼けてやる振をして、下の皿を一枚毀して置いたから、先ず恋の意趣晴しをして嬉しいと思い、実は土間で腕を組んで悦んでいると、此の母さまが飛んで来て、私が病苦を助けてえと危え奉公と知りながら参って、人参とかを飲まそうと親のために指を切られるのも覚悟で奉公に来たアから、代りに私を殺して下せえ、切って下せえと子を思うお母の心も、親を助けてえというお千代の孝行も、聴けば聴く程、あゝー実に私ア汚ねえ根性であった、何故此様な意地の悪い心になったかと考えたアだね、私が是れを考えなければ狗畜生も同様でごぜえますよ、私ア人間だアから考えました、はアー悪い事をしたと思いやしたから、正直に打明けて旦那さまに話いして、私が千代に代って切られた方が宜いと覚悟をして此処え出やした、さアお切んなせえ、首でも何でもお切んなせえまし」
「妙な奴だなア、手前それは全くか」
「へえ、私が毀しやした」
「成程長助、此者が毀したかも知れん、懺悔をして自分から切られようという以上は、然うせんければ宜しくない、併し久しく奉公して居るから、平生の気象も宜く知れて居るが、口もきかず、誠に面白い奴だと思っていた、殊に私に向って時々異見がましい口答えをする事もあり、正直者だと思って目を掛けていたが、他人の三層倍も働き、力も五人力とか、身体相応の大力を持っていて役にも立つと思っていたに、顔形には愧じず千代に恋慕を仕掛るとは何の事だ、うん權六」
「はい誠に面目次第もない訳で、何卒私を………」
「權六さん/\、お前私へ恋慕を仕掛けた事もないのに、私を助けようと思って然う云ってお呉れのは嬉しいけれども、それじゃア私が済みません」
「えゝい、其様なことを云ったって、今日誠実を照す世界に神さまが有るだから、まア私が言うことを聞け」
「いや、お父さまは何と仰しゃるか知らんが、どうも此の長助には未だ腑に落ちない事がある權六手前が毀したと云う何ぞ確な証拠が有るか」
「えゝ、証拠が有りやすから、其の証拠を御覧に入れやしょう」
「ふむ、見よう」
「へえ只今……」


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