三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「へえ御免なせえまし、私は千代の受人丹治で…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「はい、失礼しました。私は千代の保証人の丹治で、母も謝りに参りました」
「うむ、そなたが千代の保証人の丹治と申すか」
「はい、私は長年勤めた家来で、店請けをしております」
「うん、あそこに参っているのが」
「母でございます」
「娘がとんでもない不始末を致しまして、お怒りなのは当然のことと存じますが、どうか老体の私を哀れにお許しくださいませ。お許しを願いたく存じます」
「いや、それはいかん。あれは先祖伝来のもので、添書もあり、先祖の遺言がこの皿に添えられている。だからどうしても仕方がない。切りたくはないが、御遺言には逆らえないので、やむなく指を切る。指を切ったって命に障るわけでもあるまい。中程から切るのだし、何も不自由なことはないだろう」
「はい、でございますが、この千代は親のためにこちらに奉公に参りました。申し上げるまでもなく、私は長く病気で、人参の入った薬を飲めば治ると医者に言われましたが、長らく浪人暮らしで貧乏ゆえ、どうしても人参を買うお金がありません。娘が心配して、お屋敷の道具係を勤めれば3年で30両もらえると聞いて、それは大金なのでそれをもらって私を助けたいと言いました。私も止めましたが、この娘がどうしてもと申してこちらに参りましたが、親一人子一人、他に頼りになる者はいません。今この娘を不具にいたしましては、明日から内職をすることができませんので、どうかお許しくださいませ。私はこの娘より他に頼れる者がいないのです」
「黙れ。何度言っても無駄だ。そのために以前の奉公先の時に証文を取り、3年で30両の給金を与えているのだ。このように大金を出しているのも、当家の道具を大切にしているからだ。それを承知で証文に判を押して奉公に来たのではないのか?それに粗相というものでもないか。先祖から遺言状の添えられた大事な宝物を打ち砕き、糊付にして壊さないように見せかけて、箱の中に入れておくその心根がどうしても腹立たしい。だから指を切るのが嫌なら、頬っぺたを切ってやる」
「どうかお許しを……」
「顔に傷がつくと婿取り前のひとり娘で、どうすることもできなくなる」
「指を切ると内職ができなくなるから、顔の方を切ろうというのだ。傷ができても、後で膏薬を貼れば治る。指より顔の方を切ってやろう」

原文 (会話文抽出)

「へえ御免なせえまし、私は千代の受人丹治で、母も詫びことにまいりました」
「うむ、其の方は千代の受人丹治と申すか」
「へえ、私は年来勤めました家来で、店請致して居る者でごぜえます」
「うん、其処へ参ったのは」
「母でございます」
「娘が飛んだ不調法を致しまして御立腹の段は重々御尤さまでござりますが、何卒老体の私へお免じ下さいまして、御勘弁を願いとう存じます」
「いや、それはいかん、これはその先祖伝来の物で、添書も有って先祖の遺言が此の皿に附いて居るから、何うも致し方がない、切りたくはないけれども御遺言には換えられんから、止むを得ず指を切る、指を切ったって命に障る訳もない、中程から切るのだから、何も不自由の事もなかろう」
「はい、でございますけれども、此の千代は親のために御当家様へ御奉公にまいりましたので、と申すは、私が長煩いで、人参の入った薬を飲めば癒ると医者に申されましたが、長々の浪人ゆえ貧に迫って、中々人参などを買う手当はございませんのを、娘が案じまして、御当家のお道具係を勤めさえすれば三年で三拾両下さるとは莫大の事ゆえ、それを戴いて私を助けたいと申すのを、私も止めましたけれども、此娘が強ってと申して御当家さまへ参りましたが、親一人子一人、他に頼りのないものでございます、今此娘を不具に致しましては、明日から内職を致すことが出来ませんから、何卒御勘弁遊ばして、私は此娘より他に力と思うものがございませんから」
「黙れ/\、幾回左様な事を云ったって役に立たん、其のために前々奉公住みの折に証文を取り、三年に三拾金という給金を与えてある、斯の如く大金を出すのも当家の道具が大切だからだ、それを承知で証文へ判を押して奉公に来たのじゃアないか、それに粗相でゞもある事か、先祖より遺言状の添えてある大切の宝を打砕き、糊付にして毀さん振をして、箱の中に入れて置く心底が何うも憎いから、指を切るのが否なれば頬辺を切って遣る」
「何卒御勘弁を……」
「顔へ疵が附きましては婿取前の一人娘で、何う致す事も出来ません」
「指を切っては内職が出来んと云うから面を切ろうと云うんだ、疵が出来たって、後で膏薬を貼れば癒る、指より顔の方を切ってやろう」


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