三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「これ千代、それ道具棚にある糊付板を此処へ…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「千代、道具棚にある糊付板をこっちに持ってこい……何でこの板を道具棚に置いたんだ」
「はい、さっき言った通り、あのお道具の箱の蝶番が外れたので、打ち付けてもらおうと思ったんですけど、米屋の権六が俺が打ち付けてあげるよって言って打ち付けてくれたんです」
「ああ、言い訳したって無駄だ。箱の紐をさっさと解け」
「そんなに急がせると、また失敗して割ってしまうかもしれませんよ」
「お前が割っておきながら、またそんなこと言う。その手は食わないぞ。私が箱から出すから、そっちに出せ」
「あなた、落ち着いてくださいよ。乱暴にするとやっぱり私のせいにされますよ」
「長助、ここで騒ぐな。腹が立ってやるとまたお前が割ってしまう。やっぱり千代、お前が調べるといい」
「はい」
「御覧くださいよ。さっき調べたとおりに欠けていませんよ」
「黙れ。割ったことはさっき私がはっきり見ておいた。お父さん、油断しないでください。この子はなかなか隙はありません。さあ、早くしろ」
「そんな風に言われても、慌てて失敗しちゃいけません。他の道具とは違って、このお皿が一枚でも割れたら私は使い物にならなくなりますから」
「使い物にならなくなったって、召し抱えた使用人だろ?早くしろ」
「早くはできません」

原文 (会話文抽出)

「これ千代、それ道具棚にある糊付板を此処へ持って来い……さ何う云う訳で此板を道具棚へ置いた」
「はい、只今申上げます通り、あのお道具の箱の棧が剥れましたから、打附けて貰おうと存じますと、米搗の權六が己が附けて遣ろうと申して附けてくれましたので」
「いゝや言訳をしたって役には立たん、其の箱の紐をサッサと解け」
「そうお急ぎなさいますと、また粗相をして毀すといけませんもの」
「汝が毀して置きながら、又其様なこと申す其の手はくわぬぞ、私が箱から出す、さ此処へ出せ」
「あなた、お静かになすって下さいまし、暴々しく遊ばして毀れますと矢張り私の所為になります」
「これこれ長助、手暴くせんが宜い、腹立紛れに汝が毀すといかんから、矢張り千代お前検めるが宜い」
「はい/\」
「御覧遊ばせ、私が先刻検めました通り瑾は有りゃアしません」
「黙れ、毀した事は先刻私が能く見て置いたぞ、お父さま、迂濶りしてはいけません、此者は中々油断がなりません、さ、早く致せ」
「其様なに仰しゃったって、慌てゝ不調法が有るといけません、他のお道具と違いまして、此品が一枚毀れますと私は不具になりますから」
「不具になったって、受人を入れて奉公に来たんじゃアないか、さ早く致せ」
「早くは出来ません」


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