GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』
現代語化
「うん帆村君、ちょっとここへ上がってみてくれ。ここに君が興味を持つものがあるんだ」
「ああこれですか。なるほど血の上についてる縄の跡みたいなものが二種類見えますね」
「ねぇ、分かるだろう。こっちに見える細かい模様の方が、今死体を吊り上げてるときの縄の跡だ。もう一方の粗い模様で網目がハッキリ見える方の縄が部屋のどこにもないんだ」
「――これは縄の跡じゃないですよ」
「縄の跡じゃないって? じゃ何の跡だい?」
「さあハッキリは分からないけど、これは縄じゃなくて、何か金属の跡ですよ。ハンドルのペンチとか、金属の手で握るところには、よくこういう網目の溝が切り込まれてますよね」
「なるほど――網目の溝が切り込まれてある金属か。うん、君の言う通りだ。じゃもう一本の縄を探す必要はなくなったけど、その代わりに金属を探す必要が出てきた。金属って、どんなものだろうね。どうしてこんなに縄と一緒に、こんな場所に付いてるんだろうね」
原文 (会話文抽出)
「なんです、検事さん」
「うむ帆村君、ちょっとここへ上って見てくれたまえ。ここに君が面白がるものがあるんだ」
「ああこれですか。なるほど血の上についている綱の痕のようなものが二種類見えますネ」
「ねえ、分るだろう。こっちに見える模様の細かい方が、今屍体を吊りあげている綱の痕だ。もう一方の模様の荒いハッキリと網目の見える方の綱が室内のどこにも見当らないんだ」
「――これは綱の痕じゃありませんよ」
「綱の痕じゃないって? じゃ何の痕だい」
「さあハッキリは分らないが、これは綱ではなくて、何か金具の痕ですよ。ハンドルだのペンチだの、金具の手で握るところには、よくこうした網目の溝が切りこんであるじゃありませんか」
「なるほど――網目の溝が切りこんである金具か。うむ、君のいうとおりだ。じゃもう一本の綱を探さなくてもいいことになったが、その代りに金具を探さにゃならんこととなった。金具って、どんなものだろうネ。どうしてこんなに綱と一緒に、こんな場所に附いているのだろうネ」