海野十三 『蠅男』 「――娘さん。鴨下ドクトルから、二、三日う…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』

現代語化

「――お嬢さん。鴨下ドクトルから、『二、三日うちに大阪へ来い』という手紙が来たという話ですが、それは何日の日付でしたか、覚えていますか?」
「覚えていますよ。十一月二十九日の日付です」
「へえ、二十九日ですか」
「でもおかしいんです。ドクトルは三十日に、『当分旅行します』という張り紙を玄関にかけて、この家を留守にされたんです。旅行の前日に手紙で、『二、三日うちに大阪へ来い』と言って置いて、その翌日に旅行に出るなんて、変ですよね。そんな手紙もらったなんて、さっきから嘘ついてるんじゃないですか?」
「ひどいことを言うじゃないですか。私が嘘をついてるなんて――」
「じゃあ、なんで手紙を持ってこなかったんですか。この家に入り込もうとして、警察に見つかって、ドクトルの娘だとか嘘ついて警察をだまそうとしたんでしょう。どうですか、当たってるでしょ、参りましたか。――」

原文 (会話文抽出)

「――娘さん。鴨下ドクトルから、二、三日うちに当地へ来いという手紙が来たという話やが、それは何日の日附やったか、覚えているか」
「覚えていますとも。それは十一月二十九日の日附です」
「へえ、二十九日か」
「そらおかしい。ドクトルは三十日に、当分旅行をするという札を玄関にかけて、この邸を留守にしたんや。旅行の前日の手紙で、二、三日うちに大阪へ来いといって置いて、その翌日に旅行に出るちゅうのは、怪ったいなことやないか。そんな手紙貰うたなどと、お前はさっきから嘘をついているのやろう」
「まあひどい方。わたしが嘘を云ったなどと――」
「そんなら、なんで手紙を持って来なんだんや。この邸へ入りこもうと思うて、警官に見つかり、ドクトルの娘でございますなどと嘘をついて本官等をたぶらかそうと思うたのやろが、どうや、図星やろ、恐れいったか。――」


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