GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』
現代語化
「へー、そうなんだ」
「みんな。そこの死体を見るのはいいけど、触っちゃダメだよ。殺人の証拠が消えちゃうと、警察が犯人探すの大変になっちゃうでしょ」
「どうよ大辻さん。この殺人事件で、大辻さんは何見つけた?」
「おい、勇坊。みんな笑ってるぜ」
「あら、面白いこと言うのね。あなたたちって誰なの?」
「僕らを怪しいと思ってるんだろ、ジュリアさん。僕らは怪しくないよ。私立探偵なんだよ。帝都で有名な覆面探偵、青竜王って知ってるでしょ? 僕らはその青竜王の右の小指なんだよ」
「へー、あなたが小指なの」
「違うよ。小指は大辻さんで、僕は右腕さ」
「青竜王がここへ来るの?」
「うーん」
「青竜王がいれば、こんな事件すぐ解決するのに。でも青竜王ってもう10日も行方不明なんだよね。だから僕と大辻さんがこの事件解決しようって」
「おいおい勇坊。余計なこと言うなよ」
「そうだよ。さっさと推理しないと…」
「大辻さん気付いたかどうかわかんないけど、この学生さん最初はあの木の陰で向こうを向いて座ってたんだよ。そしたら学生さんの後ろの茂みから2本の手がブワーって出て、針金で学生さんの首をギュッてやったんだ。それで死んじゃった」
「そんなの分かってるよ」
「そうかなー。で、犯人は回り込んでこの死体の近くに来て、首のところ切って血を出したんだ。そうすれば生き返らないからね」
「そんなの俺だって分かるわ」
「へー、そうかなー。殺される前、学生さんは一人のキレイな女性と喋ってたんだ。あそこのチョコレートの包み紙の中とかに、口紅がついたのが混ざってる」
「え、本当?それは…」
「ほら、大辻さんには分かってないでしょ。学生さんは女性と喋ってるうちに、女性は何かの用事で行っちゃったの。すぐ帰ってくるから待っててねって、言われたから学生さんは待ってた。そしたら首を絞められちゃった」
「青竜王のマネだけは上手いんだよな」
「それからまだ分かったことがある…」
原文 (会話文抽出)
「大辻さん。赤星ジュリアの外に、もう一人若い男が殖えたぜ」
「ほう、そうじゃなア」
「皆さん。そこにある屍体を見るのはかまわないけれど、手で触っちゃ駄目だよ。折角の殺人の証拠がメチャメチャになると、警官が犯人を探すのに困るからネ」
「どうだい大辻さん。この殺人事件において、大辻さんは何を発見したか、それを皆並べてごらんよ」
「オイよさねえか、勇坊。みなさんが嗤っているぜ」
「まあ面白いこと仰有るのネ。あなた方は誰方ですの」
「僕たちのことを怪しいと思ってるんだネ、ジュリアさん。僕たちは、ちっとも怪しかないよ。僕たちはこれでも私立探偵なんだよ。知っているでしょ、いま帝都に名の高い覆面探偵の青竜王ていうのを。僕たちはその青竜王の右の小指なんだよ」
「まあ、あなたが小指なの」
「ちがうよ。小指はこの大辻さんで、僕が右の腕さ」
「青竜王がここへいらっしゃるの?」
「ううん」
「青竜王がいれば、こんな殺人事件なんか一と目で片づけてしまうんだけれど。だけれど、青竜王はどうしたものか、もう十日ほど行方が分らないんです。だから僕と大辻さんとで、この事件を解決してしまおうというの」
「オイオイ勇坊。つまらんことを云っちゃいけないよ」
「そうだ。それよりも早く結論を出すことに骨を折らなければ……」
「大辻さんには分っているかどうかしらないけれど、この学生さんは始めその木の陰で向うを向いて腰を下ろしていたんだよ。するとネ、学生さんの背後の繁った葉の間から、二本の手がニューッと出て、細い針金でもって学生さんの首をギューッと締めつけたんだ。それでとうとう死んじゃったんだ」
「そのくらいのことは分っているよ」
「どうだかなア。――そこで犯人は、表へ廻って、この屍体の側に近よった。そして咽喉のところを喰っ切って血を出してしまったのさ。こうすると全く生きかえらないからネ」
「それくらいのこと、わしにだって分らないでどうする」
「へーン、どうだかな。――殺される前に、学生さんは一人の美しい女の人と一緒に話をしていたのに違いない。その草の間にチョコレートの銀紙が飛んでいる中に、口紅がついたのが交っている」
「ええ、本当かい、それは……」
「ほーら、大辻さんには分っていないだろう。――学生さんは女の人と話しているうちに、女の人はなにか用事が出来て、ここから出ていったのさ。すぐ帰ってくるから待っていてネといったので、学生さんはじっと待っていた。その留守に頸を締められちまったのさ」
「青竜王の真似だけは上手な奴じゃ」
「それからまだ分っていることがある……」