§ 3
ソレノイドコイルの製作とそのインダクタンスの測定
自作ソレノイドのインダクタンスを求めるその形状・巻数を用いた計算
3-1)実験の原理
ソレノイドコイルの製作とそのインダクタンスの測定(以降、実験g-3と略す)
§ 3
2-1) 方法 2 より、楕円が直線上になる、つまり Y0=0
のとき、 φ=0 であり、共振状態にLRC回路はある。よって、 1:1 リサージュ図形が直線上になる周波数を調べることで、簡易的に共振周波f0を求められる。
また、共振各周波数
、 f0=ω0/2π
だから、
LC=1/(2πf0)2
である。
自作ソレノイドのインダクタンスを求めるその形状・巻数を用いた計算(以降、実験g-4と略す)
ソレノイドの半径を
a 、長さを l 、全巻数を N とする。直径と長さの比(:アスペクト比) RA=2a/l<<1 でないとき、自己インダクタンス L
は
但し
,
φ:ソレノイド自身を貫く磁束 μ0:真空中の透磁率
と表される。
よって、長岡係数
KN は、RA<<1であるときのL μ0πa2N2/l を L0 として、
と求められる。
したがってRAを求め、与えられた KN-RA の特性曲線を使えば、Lの値が計算できる。
3-2)実験材料・道具・装置
装置
◆オシロスコープ HITACHI V-252 20 MHz
◆低周波発振器A KENWOOD FG-275
◆自作ソレノイド用LCR直列回路 〔C=9.78 μF R0=9.94
Ω〕
◆デジタルLRCメーター
装置は図 2- 3と同様に配線した。ただし、LCR直列回路は自作ソレノイド用LCR直列回路に替えた。
測定に用いる道具
◆ノギス ◆金尺*
自作ソレノイドの材料
◆紙管…太さの違うもの3本 ◆導線…表面エナメル加工 ◆セロハンテープ
ソレノイド製作および回路への組み込みに用いる道具
◆はさみ ◆油性マーカー ◆布ヤスリ
◆金尺(*と同一) ◆強力ニッパー ◆ラジオペンチ
◆ハンダごて(20W)及びハンダ
3-3)実験方法
<g-3>
( 1)紙管にそれぞれ導線を100回巻き付け、ソレノイドを3本(以降、太い方から順にA、B、Cと呼ぶ)作った。
( 2)自作ソレノイド用LCR直列回路に自作したソレノイドを1本、組み込んだ。
( 3)オシロスコープを以下のように設定した。
SOURCE[X MODE]:CH1 MODE[Y MODE]:CH2 TIME/DIV:X-Y
( 4)低周波発振器Aの発信周波数を調節して、オシロスコープの画面に現れる 1:1 リサージュ図形が直線上になる周波数を3回求めた。
( 5)( 2)から( 4)の操作をほかの2本の自作ソレノイドについても行った。
<g-4>
( 1)自作ソレノイドそれぞれについて、以下の値を測定した。()内はその際使用した道
具である。
・紙管の外径(ノギス)
・巻いた導線を含めたソレノイドの外径(ノギス)
(上記二つの値の平均値をもってソレノイドの直径2aとした)
・コイルの長さ
l (金尺)
・導線の太さ
D (ノギス)
( 2)自作ソレノイドそれぞれについて、デジタルLRCメーターでLを測定した。
3-5)測定データ
実験g-3の測定データと計算されるLの値を表
3- 1に、g-4(1)(「実験g-4 実験方法の(1)」を表す、以下同様)により得られた測定データを表 3- 2に記す。
表
3- 1:g-3測定データ及び結論 |
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C= |
9.78 |
μF |
ソレノイド |
測定値 共振周波数f0 (kHz) |
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インダクタンス |
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平均値 |
L
(H) |
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A (太) |
4.45 |
4.46 |
4.39 |
4.43 |
1.32 |
×10-4 |
B (中) |
6.19 |
6.12 |
6.13 |
6.15 |
0.686 |
×10-4 |
C (細) |
10.14 |
10.39 |
10.24 |
10.26 |
0.246 |
×10-4 |
表
3- 2:g-4(1)測定データ |
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紙管直径 |
ソレノイド直径 |
ソレノイド長さ |
銅線太さ |
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ソレノイド |
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(銅線含む) |
l |
D |
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(mm) |
(mm) |
(cm) |
(mm) |
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A (太) |
29.7 |
30.7 |
5.13 |
0.5 |
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B (中) |
20.9 |
22.0 |
5.55 |
0.5 |
|
C (細) |
9.9 |
10.9 |
5.35 |
0.5 |
3-6)解析及び結論
実験g-3の測定データから計算されるLの値は表
3- 1にある。
また、g-4(1)により得られた測定データより計算されるLの値、およびそれを導く中間計算値とg-4(2)の測定データLを表
3- 3に記す。
なお、表 3- 1、表 3- 3をもって結論とする。
表 3- 3:g-4(1)中間計算結果及び結論 (g-4(2)測定値含む) |
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真空中の透磁率 μ0= |
1.26 |
×10-6 H/m |
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ソレノイド |
巻数 |
アスペクト比 |
長岡係数 |
g-4(1) |
g-4(2) |
ソレノイド |
直径 |
N |
RA |
KN |
インダクタンス |
インダクタンス |
|
2a (mm) |
(回) |
L (×10−4H) |
L (×10−4H) |
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A (太) |
30.2 |
100 |
0.589 |
0.794 |
1.40 |
1.20 |
B (中) |
21.5 |
100 |
0.386 |
0.852 |
0.699 |
0.61 |
C (細) |
10.4 |
100 |
0.194 |
0.928 |
0.186 |
0.20 |
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3-7)検討と考察
実験過程及び測定操作において不適切であった点は、思い当たらない。
有効数字は
< g-3
>:与えられた自作ソレノイド用LCR直列回路のCの値が3桁であることに起因し、3桁である。
<g-4(1)>:ソレノイド直径が3桁であることに起因し、3桁である。
<g-4(2)>:値はデジタルLRCメーターを読み取ったそのままの値である。
g-4(2)の測定値を真値として相対誤差を計算すると表
3- 4のとおりとなる。また、実験の妥当性も各項目について表 3- 4に付す。
表
3- 4:相対誤差および実験の妥当性の評価 |
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ソレノイド |
g-3 (%) |
評価 |
g-4(1) (%) |
評価 |
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A (太) |
9.8 |
やや悪い |
16.4 |
悪い |
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B (中) |
12 |
やや悪い |
14.6 |
やや悪い |
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C (細) |
23 |
非常に悪い |
7.00 |
良くも悪くもない |
<誤差の要因>
g-3について、
「オシロスコープの画面に現れる
1:1 リサージュ図形が直線上になる周波数」という誤差の出やすい測定内容であった。よって3回求め、平均値を使用することで誤差をおさえた。
g-4(1)について、
紙管の外径と巻いた導線を含めたソレノイドの外径の測定について、ノギスでソレノイド(紙管)を垂直に挟めたか確かでない。
<§ 3 終わり>
<以 上>
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