燃料電池ワールド (2002/07/03 21:10)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.053 2002/07/03発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆6日の市民講座の募集
「コスト100円の燃料電池で何ができるか」 ゲスト=東京都総合技術教育センター
 佐藤昌史氏

 佐藤氏の専門は自動車技術。ディーゼルの排ガスで出てくる煤煙を使って触媒を作り、手作りの燃料電池で発電した。この時のアイデアが元になって、コスト100円で燃料電池の原理を教える手作りキットが考え出された。当日は、着想から完成に至るまでの試行錯誤や、このキットを使ってどういう勉強ができるのかなどについてお話を戴きます。燃料電池を教育現場で教えようという先生には特におすすめの講座です。
○場 所 岩谷産業株式会社本社会議室(新橋駅から徒歩10分くらい。地図をお送りします)
○参加費 会員は無料。非会員は2000円。
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「第○回燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
  メール info@pem-dream.com  FAX 03-5408-3252

■PEM−DREAM NEWS 番外編
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◇「六ヶ所村」異聞(上)

 この時期の六ヶ所村(青森県)は、霧が多い。朝は必ず鶯の鳴き声が聞かれ、晴れたときの海と山の色は、実に鮮やかですがすがしい。

 私(事務局長)は、10日ほど前からここに来ている。知人が村長選挙に立候補したので、その手伝いのためである。そのため、PEM―DREAMの活動がストップしてしまい、先週のメルマガを発行することができなかったことを読者の皆さんにお詫びします。6日の市民講座は予定通り開催しますので、ぜひご参加ください。

 さて、六ヶ所村といえば「むつ小川原開発」で全国に知られているところであり、国家石油備蓄基地、原子燃料サイクル事業のウラン濃縮工場や低レベル放射性廃棄物の貯蔵廃棄物管理施設などがあり、国際核融合実験炉(ITER)の誘致場所ともなっていて、国の基幹エネルギーが集まっている。また、陸上自衛隊の天ヶ森射爆撃場もあり、国との強い関係が目に見えて直接感じられるところだ。この村が「陸の孤島」と呼ばれてきたのは、電車がなく、バスも少なく、自家用車に頼らなければ移動できないために、冬の雪で交通が途絶したときには歩くしか方法がなくなる本州最北端に位置しているためだろう。

 その村の村長が今年5月、収賄容疑で事情聴取中に自殺した。発端は、近隣の天間林村の汚職事件で逮捕された業者が、「六ヶ所村長に現金を渡した」と供述したことにある。飛び火したわけだ。そして村長選挙となった。7月7日投票の七夕選挙である。

 来てみたら驚く話ばかりだった。前回の村長選挙は昨年11月に行われたばかり。村議会の与党と野党ががっぷり四つに組んだ激戦だった。そのときに飛び交った金が1人3〜5万円。有権者は9千人強で投票率が94%だったから、3億円近いと言われる。完全な金権選挙が行われた。

 この選挙資金を用意するために日常的な談合が繰り返され、上納金は発注金額の5%だという。村の財政は豊かだ。日本中の原子力発電所から出される放射性廃棄物を一手に引き受けているので、原子力施設受け入れに伴う電源三法交付金がこの20年間で約205億円流れ込んだ。平均1年で10億円だ。青森県内で02年度当初予算が30億円に満たない町村は18ある。そうした自治体にとって10億円は魅力だろう。

 さらに、核燃サイクル施設の立地による固定資産税が入ってくる。人口1万2000人弱の六ヶ所村の02年度の一般会計当初予算は105億5600万円だが、日本原燃の固定資産税がその半分以上を占めている。こうして、六ヶ所村は県内で唯一、地方交付税の不交付団体となっている。ところが一人当りの村民所得は、少し古いが1992年では216万円、県民所得との比較では95.5%である。村の財政に比して村民の生活は豊かとはいえないだろう。

 100億を超える歳入から普通建設事業費として30億8000万円が出ていく。先の18自治体の年間予算以上の額だ。ここから生み出される上納金は5%とすれば1年で1億5400万円、4年で6億1600万円となり、4年ごとに繰り返される村長と村議の選挙資金の額とほぼ一致する。この話は何人もの村民から聞いたし、「六ヶ所村の最大の産業は選挙だ」という言葉も聞いた。

 こうしたからくりの一端が、前村長の逮捕ともなれば明るみに出るかもしれなかったのだ。

 自殺によって事態は急転した。村の出身者で、横浜でフェンス工事の会社を経営しているO氏(これが私の知人である)が、こんな村の状態は放っておけないとばかりに真っ先に立候補してしまった。村議会の与党野党は、半年前の村長選挙と同様にそれぞれ候補を立てようとしたが、人材不足でできず、結局、前の教育長を担いで1本化してしまった。これにはマスコミから批判が集中した。また、村民の中でも釈然としない人が出てきたのである。

 こうして闘いの構図が決まった。村議22人対ゼロ。到底勝ち目のない選挙だが、それでもO氏はやるという。「100%の村民参加で利権ゼロの六ヶ所村を」をスローガンにふるさとに戻ったのである。

 戻った途端にうわさが出た。「来年の村議選(統一地方選挙)に出るんだろう」「自分の会社に仕事を流すんだろう」等々。人口の少ない村では、情報の伝播力は驚くほど早く強い。いきわたるまでに多分1時間とかからないだろう。この構造的な地域的特性が、しがらみの強い閉鎖的な村の社会的基礎となっている。都会では、関心のない他人の目を集めることがむずかしいが、ここでは関心がありすぎて、それが圧力ともなるのである。

 私には田舎がないのでよくわからなかったが、都市と農村の対立という昔聞いた言葉を思い出した。日本の所得水準は高いといわれており、都会では何でも簡単にお金を使えば手に入るが、ここでは生活は質素で、お金だけではものは手に入らない。人のつながりが大事なのだ。都会で使う消費電力を作ったやっかいな残りカスを押し付けられ、それに伴ってついてきた金が、村をゆがめてしまった。
そもそも選挙にこんなに金がかかるようになった事情を聞くと、その根源は1968年(昭和43年)の通産省の工業開発の構想試案にたどりつく。ここからむつ小川原の開発が始まり、大規模工業基地の建設に村は反対した。開発は難航し、1978年ごろからは国家石油備蓄基地建設へと変化して、石油コンビナートが建設されていった。だが、石油もだぶつくようになった1984年、電気事業連合会が核燃料サイクル施設立地の要望を行い、村はまた揺れた。この当りの村長選挙で、賛成派、反対派の両陣営にどこからか選挙資金として数億円ずつがばらまかれ、金権選挙が定着していったようだ。保険をかけられたのだ。その後の選挙では、選挙犯罪として最も重い買収が普通のこととなり、今日に至っている。都会の文書違反など、への河童というよりも必要がないのである。
村に行っていろいろ調べているうちに、選挙公報が発行されないことがわかった。信じられなかった。東京都の約半分ほどの土地に1万2000人弱が住み、有権者は約9000人だ。ポスターは公営掲示板に貼るので89枚しか使えない。選挙はがきは2500枚と決まっている。新聞広告は2回。それと、宣伝カー1台。法的にできる選挙活動はそれだけだ。94%もの投票が行われる地域で、有権者に政策を届ける手段が限られている。選挙公報がなければどうにもならない。集会を開いても隣近所の目を気にして、家から出てこないからだ。
選挙管理委員会に申し入れをしたが、絶句していた。選挙公報は作らなくて当たり前ということだった。法律が任意規定になっているので、条例を制定しなければ出せないのだ。今回初めて知ったのだが、日本の町村では選挙公報を出していないところがかなりある。今回の事例から考えると、公職選挙法はなんとも中途半端な法律だと思われる。
そこで、もっと法律を調べていくと、政治団体の政治活動は自由だということがわかった。選挙活動にならなければ、何をしてもいいのだ。早速、政治団体を作り、政談演説会をセットした。それを知らせるビラを作り、多分、この村では選挙運動と政治運動の区別などつきそうもないだろうから、トラブルが起きないように事前に選管に話に行った。選管の人は政談演説会を知らなかった。趣旨を述べて、会場確保に走り回る。なにしろ公民館は3か所しかなく、ひとつの公民館から次に行くまで、車で20分はかかる。
公民館でも問題に突き当たった。開催日が火曜日になっているところがあったが、火曜日は閉館だという。
「みんなそうですか?」「条例でそうなっている」
やむなく開催日の変更を印刷会社に連絡したが、夕方、書類を出しに本庁に行ったところ、そこの課長は「そんなことはない」とだめになった公民館に電話して、「このことは貸さなくてはいけない」と指示してくれたのだ。味方ということではなく、公平であっただけなのだが、地獄に仏のような気持ちだった。条例ではなく、習慣で貸していなかったらしい。
今度は印刷が問題になった。さっき変更したので、また直さなくてはならない。しかし、新聞折り込みの予定なので時間が間に合わない。まいったなー、と思っているところにタイミングよく折り込み会社から電話が来た。
「二転三転しましたが、新聞社から断ってきたので配れません」
なんということだ。こっちはそれしか方法がないので候補者の名前も顔も入れないで作っているのに、言論の自由を標榜している新聞社が断るとは。しかし、民間企業であるから文句をつけても仕方がない。まあ、印刷の変更はしなくてよくなったのだから幸いとして、自前のビラをコピーで作り出すことになったのである。こうしたどたばたを繰り返しながら、2日の告示を迎え、今日で2日目だ。あと3日間で終わる。私はPEM−DREAMの市民講座のために6日に帰京するので、市民講座は予定通り開くことをお伝えします。この話の後半は来週に。

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○燃料電池市民講座 http://www.pem-dream.com/citizen.html

○EVENT INFORMATION http://www.pem-dream.com/event.html

○燃料電池マイ・レポート http://pem-dream.com/report.html

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■海外ニュース(6月)
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<輸送>
●GMがガソリン駆動燃料電池自動車を披露
ぜネラル・モータースは、ガソリンから水素を取り出し、電力を発生させて走行できる世界初の燃料電池自動車、シボレーS−10を披露した。シボレーS−10の燃料電池の加速能力は、燃料加工時にガソリンに含まれる低量の硫黄を一連の化学反応により変化させることにより生み出される。燃料電池スタックと組み合わせれば、全般的なエネルギー効率は今までの技術に比べ40%以上に向上し、普通の内蔵型燃焼エンジンよりも50%以上優れている。
改良型燃料電池、S−10の加速能力は40mpgに達する。二酸化炭素発生量も今までのガソリン式に比べて50%減少し、ガソリンスタンドに設置されれば環境にとても優しいだろう。

<定置型電源>
●フュエル・セル・エナジーとMWHが取引契約書に調印
フュエル・セル・エナジー社は、MWHエナジー・ソリューションズとの合意文書に調印し、フュエル・セル・エナジー社の超低出力のダイレクト燃料電池を、国内の公共事業や商業・産業施設へ配置することを取り決めた。最初の設置はアメリカの汚水処理施設を検討している。

●ノルウェーのプロジェクトチーム結成
Norske ShellとAker KvaernerとStatkraft は、天然ガス駆動の燃料電池開発の可能性を探るべく共同プロジェクトチームを結成する事に合意した。2010年までに10〜20メガワット級の燃料電池を開発する為にかかる費用は、10億ノルウェークローネ(1億2600万USドル)程必要であると予想される。

●プラグ・パワーが本田R&DとのMOUに調印
プラグ・パワー社は、本田リサーチ・アンド・ディベロップメント(R&D)社との合意規約(MOU)に調印し、住宅に設置して水素自動車に燃料を補給するシステムの開発に参加する。
また、この合意のもとにプラグ・パワー社は、本田R&D社に定置型燃料電池向け燃料発生装置を2基提供する事となった。両社は今年度末には、住宅設置型燃料補給システムの開発に向けた最終合意に達すると見られる。この装置は、天然ガス駆動で燃料電池自動車に水素燃料を補給する間に、同時に電力・温水・熱を発生させる。

●DCHがコン・エディソンへ燃料電池を発送
DCHテクノロジーは、NYのコン・エディソン社に純水素、又は天然ガス両用の5kW DCH Enable燃料電池を販売し、発送した。コン・エディソンはこのシステムを、テスト確認後、対象となる顧客へパワー・クオリティー・システムとして、またはピーク時のエネルギー備蓄用に設置する予定だ。

<燃料・改質器・貯蔵>
●日本で3番目の水素供給ステーションが完成間近
昨年日本で建設が始まった日本で3番目の水素補給ステーションが、2002年7月に完成予定である。この計画はWE−NETという日本の政府主宰の水素エネルギー計画により実行され、水酸化ナトリウム製品開発への水素利用に使用される。前の2か所のステーションでは、水素を天然ガスから、あるいは電気分解により水から取りだす技術をみることができる。
今度の新しいステーションは、横浜にある水酸化ナトリウム製造会社のツラミ・ソーダ社の本社に設置される。この水素保管・供給システムはイワタニ・インターナショナル社によって開発され、一度に5台の燃料電池自動車に燃料補給が可能である。

<報告・市場調査>
●グローバル・オートモーティブ・マーケット・スタディー
オートモーティブ・コンパスは、『Growth and Supply-Chain Dynamics of theGlobal Automotive Fuel Cell Market.』と題した最新の調査結果をまとめた。掲載内容は、市場規模、燃料電池販売チェーンの技術タイプと関係者別の表、競争によるデータグラフ、販売チェーン間の戦略上の同盟や提携、SWOTの分析、有用な見識などである。この調査報告書入手希望の方は、以下のHPで。

<提案要求>
●海軍海上戦センターが燃料電池開発の提案募集
米国海軍海上戦センターのカーデロック部門、戦艦システム・エンジニアリング・ステ−ションは、分析的、専門的、兵站学的なR&Dプログラムに関係のあるプログラム・サポート・サービスを募集しており、燃料電池開発もその中に含まれている。申し込み期限は2002年7月24日である。

<その他>
●オハイオ州が1億300万ドル規模の燃料電池計画に着手
オハイオ州のボブ・タフト知事は、フュエル・セル・イニシアティブに1億300万ドルを費やし、燃料電池の調査、計画実演、雇用の創出に取り組む。この資金は3通りに分類される。7500万ドルは低金利の貸し付けに利用され、雇用の創造と確保につながるような主要な計画に充てられる。2500万ドルは燃料電池の調査・開発実演に充てられる。残る300万ドルは職業訓練用に使われる。

●FCCIがテックシスのSOFC製品を配送予定
テックシス社は、フュエル・セル・カンパニーズ社(FCCI)との合意文書に調印し、これによりFCCIがテックシス社の個体酸化物燃料電池(SOFC)製品の中国と南アメリカでの製造と配送を独占的に行う事となった。今回の合意のもとでFCCIは、燃料電池製品の認可取得済みの部分で製造・販売・配送にかかる費用すべてを概算し、ある規定の水準に達する製品を製造しないといけない。

●USFCCが新しい代表を発表
米国燃料電池評議会春季会合で新しい代表が承認された。2002年から2003年の会長はプラグパワー社のジョージ・アール氏、会計にポーベア−社のジム・スタイク氏、秘書にアイダテック社のエリック・シンプキンス氏となっている。

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■燃料電池ワールド
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 □編集・発行:燃料電池NPO法人PEM−DREAM 

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