直観が誤りをおかしやすい点

 戻る

直観が誤りをおかしやすい点についてまとめた。
 
北岡 元 氏の「仕事に役立つインテリジェンス」*1 と、
印南 一路 氏の「すぐれた意思決定―判断と選択の心理学」*2 は、ともに
ヒューリスティクス(直観)について書かれた本である。
 
両書の内容を新たに私が構造化し、直観が誤りをおかしやすい点についてまとめた。
 
なお、以降において、北岡 元 氏の「仕事に役立つインテリジェンス」を「北岡本」と
表わし、印南 一路 氏の「すぐれた意思決定―判断と選択の心理学」を「印南本」と表わす。
 
 *1 : 北岡 元 : 仕事に役立つインテリジェンス (PHP新書, 2008)
 http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1974.html 
 
 *2 : 印南 一路 : すぐれた意思決定―判断と選択の心理学 (中公文庫, 2002)
 http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1493.html 
 
 


I. 脳という器官に由来する誤りをおかしやすい点 

1. 一度に扱える情報量が小さい  

表層情報しか見ない。  北岡本 p.125.   > 心理学の実験では、人間は八つ以上の異なるインフォメーションを与えられると、   >それらを整合的に扱うことができなくなることがわかっている。

1.1 条件付き確率を、確率だと認識する   

確率=事前確率×条件付き確率であるのに、事前確率を軽視し、確率≒条件付き確率と 捉えてしまう。 北岡本 p.84〜 ベースレートの誤信(2) 印南本 p.156〜 隠された前提条件 印南本 p.105〜 データ自身の信頼性とデータのもつ予測能力 印南本 p.107〜 値そのものを疑う
(1) 因果関係があるために当然高い条件付き確率を、結果の確率だと認識する    
北岡本 p.104. 因果関係のヒューリスティクス  >「人間は判断にさいして、ものごとは必ず因果関係があると思い込んでしまう」 そして、因果関係があると思われる事柄を高確率な事象だと捉えてしまう。 印南本 p.198〜 シナリオの因果的一貫性 印南本 p.163〜 連言錯誤――もっともらしさの嘘 北岡本 p.82〜 ベースレートの誤信(1) 印南本 p.174〜 代表性バイアス――典型的なものは危険 ステレオタイプと類似幻想 印南本 p.195〜 「もっともらしい原因」の判断   - 重複して確認したいと欲する 反証すること、対偶によって証明することを思いつかない。 印南本 p.186〜 確証バイアス(「確認する重複への渇き」、支持証拠収集戦略)   - 一貫性があるものを高確率な事象だと捉える 独立した事柄を個々に評価すべきなのに、一貫性があるからという理由により高い評価を 与えてしまう。 印南本 p.125〜 重複データの一貫性幻想   - 因果関係を示されたものに好意を持つ 印南本 p.114〜 保険文脈

1.2 利用可能な情報を過度に重視する   

個々事例である「一見」を、総合的な「百聞」よりも勝っていると捉えてしまう。 北岡本 p.99. 利用可能性のヒューリスティクス(availablity heuristic)  >「人間は判断にさいして、無意識のうちに思い出しやすいもの、つまり利用しやすいものを  >重視してしまう」 印南本 p.165〜 利用可能性バイアス(想起容易性、検索可能性、具体性)
(1) 直近の情報と比較するために短期的変化にむやみに反応する    
印南本 p.146〜 平均への回帰 避ける方法: 管理図のように、平均値線に平行な、変動の限界を示す線を引いて(印南本 p.154)判断する。
(2) 最初あるいは最後の選択肢を過度に評価する    
印南本 p.111 先行効果 印南本 p.111〜 最近効果  印南本 p.112.   >研究結果によると、先行効果と最近効果の関係は、記憶の想起の容易性と関係がある   >事が分かっている。

1.3 判断の修正に失敗する   

北岡本 p.113. 修正のヒューリスティクス  >「人間は判断にさいして、無意識のうちに、とりあえずの結論を出してしまい、  >そののちにそれを徐々に修正する」 北岡本 p.113. アンカリングのヒューリスティクス  >「人間は判断にさいして、とりあえずの結論がアンカー(錨)のようになってしまい、  >あとでいろいろなインフォメーションを与えられても十分に修正できない」 避ける方法: ベイズの定理(北岡本 p.132〜)の適用で緩和できる 競合仮説分析(北岡本 p.157〜)で緩和できる 印南本 p.116〜 順番効果 印南本 p.176. アンカリングと調整限界 印南本 p.201〜 仮説の更新

2. 感情によるノイズがはいる  

2.1 後知恵を予測的中だと捉える   

北岡本 p.120. 後知恵のヒューリスティクス  >「人間は、過去に起こった出来事をふりかえるときに、あれは自分がきちんと  >予測していたと無意識のうちに思い込んでしまう」 印南本 p.207〜 誘発された忘却と幻想の共有

2.2 コントロールできない事柄をコントロールできると考える   

印南本 p.131〜 コントロール幻想と自信過剰

2.3 感情が数理に優先する   

印南本 p.112〜 ハロー効果 印南本 p.120〜 ポジティブ・フレーム条件 印南本 p.121〜 ネガティブ・フレーム条件

2.4 態度と行動が矛盾する   

印南本 p.118〜 非一貫性  印南本 pp.119-120.   >態度と行動の間の関連性は、しばしばゼロに近くなり、相関係数が 0.30 を   >超過するケースは滅多にないという研究もある。

II.考え方に由来する誤りをおかしやすい点 

1. 論理を誤まる  

1.1 論理の矢印には方向があることを忘れる   

代表的には「全ての女性は人間である。ゆえに全ての人間は女性である」(印南本 p.194.) という誤りである。 これならばすぐに誤りに気づくが、次の問題は難しい   他所から私に提供された真実の情報を、その後しばらくして Aさんからも提供   される事例が多くあった。   AさんからBという、いままで他所から提供されていない情報を提供された。   情報Bは真実だといえるか。 答えは、「情報Bは真実だとはいえない」である。 記号化すると、  ∀情報. 正しい(情報)→彼が報告する(情報) であるので、  彼が報告する→正しい とは、いえないのだ。 印南本 p.191 三段論法の過失

1.2 因果関係と相関関係を同じように扱う   

 ロバート・R・H・アンホルト=著, 鈴木 炎, イイイン・サンディ・リー=訳 :  理系のための口頭発表術 (講談社 BLUE BACKS, 2008) pp.108-109.  http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1875.html   >主張の落とし穴は、たいがい、因果関係と相関関係の相違に気づかぬために   >起こってくる。 印南本 p.205〜 錯覚的因果関係

2. 事象の捉え方を誤まる  

2.1 独立試行同士を独立ではないと捉える   

北岡本 p.96〜 ギャンブラーの誤信 印南本 p.132〜 「賭博師のあやまち」

2.2 均一なバラツキを過度に期待する   

印南本 p.142. 少数の法則  >大数の法則を満たすだけのサンプル数が無い少数のサンプル数であるにも関わらず、  >大数の法則が適用できるがごとく、母集団と同じ特性をあてはめようとすること

2.3 特異事例を過度に重視する   

 堀 栄三 : 大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫, 1996) p.211.  http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1727.html   >――特殊性と普遍性を区別すること。   >哲理とはただそれだけ、枝葉と根幹とを見極めることであった。 印南本 p.127〜 極端な値と予測の正確性

3. 数字の捉え方を誤る  

3.1 対比・割合情報を過度に重視する   

実数が本質であるのに、対比や割合を重視する。 印南本 p.109〜 対比効果   関連:   ハイボール・テクニック   http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/inw_0402262.html#4 −移転→ http://takagi1.net/webcic/lib/inw2/inw_0402262.html#4 印南本 p.122〜 心理的会計 印南本 p.123〜 比率差原則 印南本 p.144〜 ばらつきと相対的ばらつき

3.2 実数情報を過度に重視する   

印南本 p.202〜 錯覚的相関関係 戻る

 

 簡易html化ドキュメント


© TAKAGI-1